目次新年号
巻頭言 「 寅年のこと」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・例会
・例会風景
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・みんなのエッセイその他
・年賀広告
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

堤 伴久
前田咲二
 

柳歩
清水信
橋倉久美子
柳歩



 

バックナンバー
21年12月(192号)
21年11月(191号)
21年10月(190号)
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号)
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巻頭言


 寅年のこと

 皆様、明けましておめでとうございます。お正月はいかがお過ごしでしたか? 私は元旦も仕事で、たくさんの年賀状に囲まれて過ごしました。

 今年は「寅年」
 語源由来辞典ですこし調べてみました。「寅年」とは、十二支の三番目。方角は「東北東」陰暦一月の異称だそうである。
「寅」の本来の読みは「引・いん」(のばし引く)「伸ばす」と同系の語で、「漢書」では草木が伸び始める状態を表すと解釈されている。
 この「寅」を「とら」としたのは、庶民に十二支を浸透させるため、動物の名前を当てたものらしい。
「寅年生まれ」の特徴として、衣食住に不自由をしない。引越しが多いのが、うし年寅年である。他家を継ぐため養子に行ったりもする。

「剛の寅」「強の寅」とよく言われるが、正しくは「五黄の寅」である。五黄とは、九星のひとつ「性質は豪気大胆、情深く、思い立ったことは是が非でも押し通さねば気がすまないところがあって、人から憎まれる。また器用で何事にも優れた才能を発揮するけれども、中には何事もできない人もいる。行をつつしみ、人と争いをしなければ、実にたぐいまれな幸運の星」だそうである。

 寅年生まれの一代運勢は「果敢に決断して、よく困難に耐え、進取の気性に富み思慮分別があり競争心が強い」
「五黄」と「寅」がドッキングしてとりわけこの年生まれの女性は敬遠される。強い寅として嫌われるのだ。その五黄の寅年生まれは、今年還暦を迎える。還暦を迎えるのは210万人で過去最高らしい。

 頂いた年賀状に登場した「とら」を二作ご紹介する。 

トラの子の年金だけで生きている アメイ
婚カツの猫トラになる初春の酒  典 呼
                                                                      たかこ

 

すずか路より
お参りも喧嘩も済んで揺れる絵馬 山本鈴花
娘だけ来て心配な夫婦仲 加藤峰子
日めくりも寒さに耐える年の暮れ 山本喜禄
途中下車しよう時間はたんとある 山本 宏
惚けぬよう毎日百字書く日課 鍋島香雪
程々の距離が切ない片思い 沢越建志
この恋も所詮実らぬゲームです 高柳閑雲
切り方のコツありますか長電話 鈴木章照
良く喋る口先ペンに替えてみる 青砥英規
いらいらを踏んづけてみる霜柱 堤 伴久
御節にもそろそろ厭きて伊勢うどん 寺前みつる
次々訃報私の順はもう近い 水谷一舟
腐れ縁忘れた頃に会うなんて 加藤けいこ
挨拶も三度目からは立ち話 小川のんの
何はさて置き忘年会は外せない 西垣こゆき
私よりきっと長生きするポチだ 松岡ふみお
青春があった枯れ木と思えない 坂倉広美
具を替えて今日もやっぱり鍋にする 橋倉久美子
年末がなければ掃除しない場所 北田のりこ
ゴミを出すおかげ曜日は忘れない 高橋まゆみ
年賀状だけが安否を知る手段 落合文彦
元旦の朝は静かな台所 浅井美津子
会席へ写真持ち込む一周忌 鈴木裕子
透明でも不透明でも叩かれる 加藤吉一
かるた取り正月までに読み直す 長谷川健一
手抜き主婦でもそれなりに忙しい 竹内由起子
修理屋に電話自分でいじる癖 水野 二
喋りすぎ孫も私に似たのかな 瓜生晴男
茶碗蒸し心の中もあったまる 安田聡子
相棒の快癒を祈る初詣で 吉崎柳歩
真冬でもなくては困る冷蔵庫 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  191号から                                       前田咲二

本心を言えばとりかえしがつかぬ    橋倉久美子
 
本心を言ってはいけない場合と、本心を言わなければならない場合がある。どちらをとるかはその時の事情によるが、本心を言って得をすることはあまりないようだ。

ゴミ出しへまた確かめている曜日    山本 喜禄
 
私の市では、一週間のうちゴミ出しのない日は土日の二日だけ。そのほかの日は毎日ゴミの種類を分別して出す。生ゴミは火・金と決まっているのだが、いざ出すとなるとカレンダーを見て確認する。この句の気持ちがよくわかる。この作者も独居老人(失礼)なのだろうか。

思い出を美化して今日を締めくくる   高柳 閑雲
 
いろいろあった今日いちにちの終りに、思い出を美化するというのは大変いい心掛けだ。私は寝る前に、過去にあった楽しい記憶を思い出しながら眠るようにしている。神様はちゃんと夢を叶えてくれるものだ。

七五三松竹梅がある祝詞        萩原 典呼
 
典呼さんお久しぶり。鈴鹿でお会いできるとは思ってもいませんでした。七五三とはお孫さんですか。相変わらず達者な句をお作りですね。

CMを入れる時間をこじあける     坂倉 広美
 
テレビドラマにしてもクイズにしても、いいところになるとCMを挿入する。視聴者の誰もが感じていることを実に的確に表現している。他の四作も佳作。

風邪の喉やさしく撫でていく葛湯    北田のりこ
 
私の好きな句に「銘酒一献喉に挨拶して通る」というのがあるが、この句もあたたかい葛湯の喉ごしを「やさしく撫でる」と言ったのがいい。風邪もすぐ治ることだろう

それぞれの趣味で夫婦にあるゆとり   浅井美津子
 
私の持論だが、夫婦の趣味はそれぞれ別の方がいい。お互い相手を重んじながら違う世界で生きてゆく。それが夫婦円満の基だと思う。

                                 (大阪瓦版の会会長・大阪府在住)
12月26日(土)例会より
宿題「 多い 」 吉崎柳歩 選と評
  リタイヤの夫と今日も小競り合い 岩田明子
  大の字に寝ると埃が目立つ部屋 坂倉広美
 秀 品数が多すぎるから決まらない 橋倉久美子
愛人の数も半端でないウッズ 吉崎柳歩
宿題「 がっかり 」 鈴木裕子 選
  お年玉孫の舌打ち見てしまう 青砥たかこ
  観覧車固い話をするあなた 日野 愿
 秀 妻子あるお方と知った淡い思慕 水谷一舟
新調のメガネを割ったのは迂闊 鈴木裕子
宿題「 がっかり 」 日野 愿 選
  タコ焼きの最後の一つ取り落とす 橋倉久美子
  化けの皮はがれたように写ってる 加藤けいこ
 秀 お年玉孫の舌打ち見てしまう 青砥たかこ
双眼鏡待ってはくれぬ渡り鳥 日野 愿
席題「 重い」 清記互選 高点句
 9点 親を看る話に重い顔が寄る 岩田明子
 7点 政権を取ったら重いマニフェスト 吉崎柳歩
 6点 十八の春に仕事が決まらない 鈴木章照
  やせないと君の杖にはなれません 小川のんの
 5点 お姫様抱っこ昔はできた妻 吉崎柳歩
  大掃除まだ始めない妻の腰 岩田明子
  しがらみも古いコートも重すぎる 北田のりこ
特別室

川柳学253年(1)                                   清水信 

 大阪の人から『川柳学』10号を戴いたのは、一年半も前のことだ。初めて見る雑誌だったが、120ページのわりには1500円と割り高の雑誌だ。『川柳マガジン』も出している老舗らしいが「川柳二五〇年」の特集なので驚いた。

 二〇〇七年は「川柳」という名称が世に出て、二五〇年という節目の年で、川柳学会が中心になって「川柳二五〇年実行委員会」を立ち上げ、記念事業を次々と開催したのだ。

「川柳」という名称が固定的になったのは明治だが、その元となったのが、柄井八右衛門の俳名「川柳」で、その名が世に現れて二五〇年。江戸の浅草、現存する天台宗龍宝寺の名主で、40歳の時(一七五七年、宝暦7年)前句付の宗匠となり、その8月万句会を開いた。それが文芸川柳の初まり。

 二〇〇七年八月二十五日に東京都台東区生涯学習センターで「川柳二五〇年式典」が行われ、文化庁や東京都からの出席もあり、三四八名が参加。山下一海教授の「蕪村の諧謔」の後、句会に入ったという。

 他に「川柳展」もあり、『川柳百面相』や『目で識る川柳250年』という記念出版もあったという。後者は2940円の大冊で、まだ見る機会がないが、史的資料としての価値は大きいか。

 表紙に「十四字詩」とあり、基調提案として、

尾藤三柳「十四字の発生と発展」
佐藤美文「十四字詩の現況」
滝 正治「十四字詩のリズム」

 の三篇があり、この主張が、多くの川柳結社の反発を買っているかも知れないと推察する。

 佐藤美文の文章に拠れば、『あだら』を創刊、埼玉川柳社の主幹であった清水美江(昭和53年、84歳で死去)が定年後創刊した『風』で提唱したのが「十四字詩」だという。雑詠を大切にした川柳の一形態という考えでいいらしい。

『風・十四字詩作品集』から引く。

・空青すぎて嘘の戸惑い  (岩田柳堂)
・丸さを拒む川底の石  (佐藤美文)
・一家団欒父はベランダ  (滝 正治)
・マンガに託す僕の革命 (川崎達海)
・流氷着いてクリオネの春(若月 葉)

『武玉川』の短句を阪井久良伎が『五月鯉』で紹介したことに始まると言われるが、小島六厘坊その他から「川柳であるかないか」の異論が出され、藤村青明は専門誌『轍』を創刊したが、二号でつぶれたという。

                                                                 (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 やましい 』
  9 言い訳はできたがやましさは残る 山本 宏
   8 立志伝やましいことは伏せてある 福井悦子
    やましくはないが裏木戸から入る 高木みち子
   7 わたくしが問うと夫は目を逸らす 山本鈴花
    裏金の経理を僕がしています 寺前みつる
    ともだちの彼とときどき逢っている 寺前みつる
    ケータイに妻の内緒の人が住む 鈴木裕子
  6 親友を悪友にして自己弁護 吉崎柳歩