目次5月号
巻頭言 「 この道」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ
・各地の大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
ひとり静


柳歩

清水信
橋倉久美子
柳歩

 

バックナンバー
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22年 3月(195号)
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号)
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20年  2月(170号)
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巻頭言


 「この道」

  「ポストイン」で好きな句を選んでいると、どこかで見たような句に度々出会う。かなりインパクトが強い句でも、悲しいかな、記憶力がいまいちで、思い出すことが出来ない。
 生意気にも、添削や寸評を書かせていただくとき、「自分らしい句を」「人真似でない句を」など、簡単に書いてしまうが、これが一番難しい。今日も、キーボードを叩きながら、どこかで、見たような句だなあと思っていると、こんな歌が浮かんできた。

 北原白秋作・山田耕筰作曲「この道」

この道はいつか来た道
 ああ そうだよ
あかしやの花が咲いてる

あの丘はいつか見た丘
 ああ そうだよ
ほら 白い時計台だよ

この歌は子供の頃、映画で見たウイーン少年合唱団が歌っていた。さわやかな歌声も耳の底に残っている。
「この道」の歌詞のように、美しい思い出として残るものはいくらあってもいいものなのだが。歌詞と言えば、上海万博のテーマソングのメロディが、日本のアーティストの曲とほとんど一緒だという問題が起きている。故意なら窃盗容疑になる問題だ。

ちなみに「この道」の三番四番も掲載しておこう。

この道はいつか来た道
 ああ、そうだよ
お母さまと馬車で行ったよ

あの雲もいつか見た雲
 ああ そうだよ
山査子の枝も垂れてる

今後も「いつか見た句」など思われないようにしたい。

                                                                 たかこ

 

すずか路より
引っ越しを追いかけてくる請求書 廣瀬まさこ
皆さんに忘れて欲しいマニフェスト 松岡ふみお
廃墟ブームだそうだ 電話がつながらぬ 坂倉広美
さくらさくら会いたい人はひとりだけ 橋倉久美子
願いごと叶い柏手音高く 北田のりこ
居酒屋のママの感じでお出迎え 高橋まゆみ
お下がりのまたお下がりが続く縁 落合文彦
振り出しに何度も戻るから長い 浅井美津子
処女作の鉢へ植えたい花ばかり 鈴木裕子
名医だと聞けば安心する患者 加藤吉一
直球で勝負ベンチの指示が来る 長谷川健一
この薬私に合うと限らない 竹内由起子
渋滞も手を握り合ういいチャンス 水野 二
春野菜高値で妻の愚痴止まぬ 瓜生晴男
片づけた土鍋にまたも来た出番 安田聡子
わたくしの定位置がある美容院 鍋島香雪
からす鳴くそうそう今日はゴミ出し日 鈴木章照
ライバルと言われその気になってくる 沢越建志
政治家の顔が漫画になりにくい 山本 宏
カメラマンやっぱり美人ばかり撮る 加藤峰子
あらららら三日寝てたら葉ざくらに 寺前みつる
順番はないもの事故の訃報聞く 秋野信子
ときめきの風に会いたい曲がり角 山本喜禄
嘘ばかりたまるポッケは僕のもの 水谷一舟
定年のない職業も閑古鳥 加藤けいこ
エコなんて言ってられない花冷え日 小川のんの
余生にはなくてはならぬ日帰り湯 吉崎柳歩
壁塗装まだあのお店大丈夫 青砥たかこ
焼酎に案内される良い目覚め 青砥英規
ダイエット勧めた人のリバウンド 西垣こゆき
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  195号から                                      ひとり 静

箒目を付け立ち入りを拒絶する     北田のりこ
 
美しい箒目があるところには気軽に入れません。どんな人でも、ひるみます。バリケードを築くより、静かにりんと、箒目で拒絶する作者のこころ。

捨てられぬカイロに温みあるうちは   西垣こゆき
 
カイロはそのままカイロでもおもしろいし、比喩的に使っていても、想像力が大きく広がります。冷たい雨の降るこの世では少しでも温かいものにすがりたいものです。

迷わせるためのテープを貼っておく   坂倉 広美
 
誰を迷わせるためのテープでしょうね。どこに貼ったのか、何に貼ったのか、どんなテープだったのだろうかといろいろ考えさせられます。ふと非日常へ連れて行かれるこういう句は大きく広がりいいですね。

揚げられる前に画材の蕗の      鈴木 裕子
 
珍しいものや美しいものが手に入ったら、食べるだけではもったいない。しばらくじっくり眺めてから写真を撮ったり、スケッチをしたくなります。同感です。

一日の長さじっくりかみしめる     青砥たかこ
 
象の時間とネズミの時間の話を読んだことがあります。同じ時間なのに人間の心っておもしろいなと思います。

ジャンボくじ外れたような妻の顔    山本 喜禄
 
すごく期待外れのことがあったのでしょう。食べにでも連れて行ってあげてください。男の人は髪を切っても、新しい服を着ていても、案外、気がつかないものですが、作者は、もちろん一瞬の妻の表情を見逃さなかったのですね。

使うまで割引券が気にかかる      加藤 峰子
 
ポイントカードもそうですが、何か得した感じですが、そのために時間とか行動とかを縛られてしまいます。特におんなは。案外、上手く利用されているのでしょうね。

アルバムで過去の時間が笑ってる    くのめぐみ
 
笑っていた時間を、どれだけたくさん持っていたかで、しあわせ度は量れるらしいです。

                              (おかじょうき川柳社会員・奈良県在住)

4月25日(土)例会より
宿題「 忘れる 」 吉崎柳歩 選と評
  自分の名忘れぬ限り大丈夫 青砥たかこ
  忘れないために背中へキスマーク 青砥たかこ
 秀 忘れないように時々水を足す 橋倉久美子
忘れたと言えずに聞いてないと言う 吉崎柳歩
宿題「 足 」 長谷川健一 選
  足だけは老化させたくない米寿 浅井美津子
  勇み足わが人生に悔いがある 水谷一舟
 秀 足かせの先をたどれば夫の手 小川のんの
足技はつかわず押しの相撲好き 長谷川健一
宿題「 足 」 水谷一舟 選
  脳よりも敏感僕の足の裏 鈴木裕子
  足跡を消してるうちに逃げ遅れ 橋倉久美子
 秀 浪花節うなるほどでもない足湯 吉崎柳歩
勇み足わが人生に悔いがある 水谷一舟
席題「 無理 」 清記互選 高点句
 9点 無理ですと言えず仕事がまたふえる 橋倉久美子
 6点 足に無理させてひきつるハイヒール 北田のりこ
 5点 無理ばかり言って床屋を困らせる 吉崎柳歩
  一行目少し無理する奉加帳 加藤吉一こ
  葉桜の舌で踊れと言われても 青砥たかこ
  無理かしら9号持った試着室 鈴木裕子
特別室

朋誌清評(2)                                      清水信 

 自分は画家ではないし、絵や骨董の目ききでもないが、毎月絵画雑誌や、絵画紹介を軸にした雑誌を十冊前後入手する。一介のフアンと見られても、文句はない。
 試みに、いま机辺にある特集誌三冊をとりあげると、次の通りだ。

(1)『Pen』260号
(2)『美術屋・百兵衛』12
(3)『OFF』104号

『ぺん』では、画家・草間弥生の特集があり『百兵衛』では奈良の特集があり『日経おとなのオフ』では「今年日本で見られる世界の名画」入門が特集されていて、いずれも図版がきれいだ。

 草間弥生は毀誉褒貶相半ばするとは言え、詩集も小説集もある才人で、その天才ぶりを疑うわけにはいくまい。
 一九二九年、長野県松本市生まれの彼女は、五二年に地元で初の個展をした後、渡米。シアトル、ニューヨーク等で個展を開いたが、絵画の展示にこだわらず、家具、鏡、食材なども自由に使い、自分自身の身体も駆使したアート・ショウともいうべき仕事でアメリカ人の度胆をぬいた。
 ハプニングとファッションショーをも兼ねたアート・シーンは欧州に渡って更に加熱、日本では当局に身柄を拘束されたりした。

 しかし、ニューヨークでの大回顧展や、ベネチア・ビエンナーレ展への日本代表としての出品等で、二〇〇〇年には芸術選奨、二〇〇一年には朝日賞を得て、終に二〇〇九年文化功労者に選出された。
 小説の方では「クリストファ男娼窟」で野生時代新人賞(一九八三年)を受賞して以来、詩集や自伝をふくめて二十数冊の著書を刊行した。

「聖マルクス教会炎上」
「無限の網」
「セントラルパークのジキタリス」
「心中桜ヶ塚」
「ケープ・ゴッドの天使たち」
「マンハッタン自殺未遂常習犯」
「蟻の精神病院」
「傷みのシャンデリア」

 これら一部のタイトルを見るだけでも、彼女の挑戦的な創造精神と、そのエネルギーが分かるであろう。

 公衆の前に自らのヌードをさらしても悔いぬ彼女の大胆な「創造」への姿勢を、常識で笑うことは出来ない。千利休やダ・ヴィンチを特集した『ペン』は、阪急コミュニケーションズ刊。

                                                               (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 嵐 』
 15 もう一度念を押されてから迷う 吉崎柳歩
 10 天秤がつりあっているから迷う 橋倉久美子
   9 点 ためらって答を消した跡がある 鍋島香雪
    美しい人が微笑むので迷う 吉崎柳歩
   7 着て脱いで脱いで着ている試着室 松岡ふみお
    ギブアップする時少しだけ迷う 寺前みつる
   6 点 迷い箸するほど数のないメニュー 小川のんの
    いつまでも迷っていたい花の路 西垣こゆき