目次9月号
巻頭言 「 様と殿」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ
・各地の大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

伴久・柳歩
丹川 修




清水信
橋倉久美子
柳歩



 

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巻頭言


 「様と殿」

「様」と「殿」の違いはぼんやり分かっていたが、「言葉の違いがわかる事典」に、ともに氏名や官名のあとにつける敬称に変わりはないが、重さが違うとある。とあったのでちょっと書き写させていただく(以降事典より)

 様のほうが殿より重い。江戸時代武士一般に対する敬称として使われていたのが、「殿」で「様」はさらに身分の高い人に対してしか用いられなかった。そのため、今でも目上の人に「殿」は使ってはいけないという人もいる。
 といっても、現在は敬称の重さはそう明確じゃなく、もっぱら公的用語として「殿」が使われるほかは、一般的には「様」が普及しているとある。敬称の重さが落ちたといえば「貴様」。「たっとい」と「様」が重なる言葉だから、本当は最上級の敬称だったはずである。江戸時代までは、目上の人に対する敬称だった。ところが以後、同輩または目下に対して男性が用いるたんなる二人称となり、今では相手をののしって使う言葉にまでおとしめられている。「貴様」が健在なところを見ると、やっぱり「様」の価値が落ちた? (終)

 川柳の世界では、吟社あてには御中、あるいは様で通している。大会などの事前投句のハガキ、約一割の人が「様」なしで来た。忘れられたのか、書かなくてもよいと思っておられるのか確かめることはできないが…。親切なところは、元から「様」付きのハガキを送ってきてくれる。手間を省いてくれているのだろうか。

 もっと、見落としそうなのが、○○方○○川柳会様、の方の前に様を付け足すことは気付かない人が多いのではないか。

 もうひとつ迷うのが、学校へ出すとき校長先生様とやはり様はいるか、とか、自分の息子に手紙を書いて「様」より「君」でもいいかなと思ったり、どうでもいいことで迷ってしまうのだが、私だけだろうか。

                                                                たかこ

 

すずか路より
色っぽい日傘だ美人だと思う 瓜生晴男
球児たちみんな吾子にみえてくる 安田聡子
あきらめがとっても早いのが救い 鍋島香雪
台風は無事に去ったとメール来る 小出順子
犬連れの散歩はすぐにお友達 鈴木章照
点滴に熱中症が繋がれる 沢越建志
猛暑日と聞いて頑張る温度計 山本 宏
美人にはめっきり弱い影法師 高柳閑雲
しあさって今日の疲れが出る予定 加藤峰子
一日の終わりは星とコーヒーで 青砥英規
建前で言っているのはお見通し 秋野信子
打ち水の乾かぬうちの夏を賞で 堤 伴久
嘲笑うように降り出すゲリラ雨 山本喜禄
ある別れ自動扉も軽く開く 水谷一舟
わが町にとり残されて盆送り 加藤けいこ
あさがおが閉じてしまうよ朝寝坊 廣瀬まさこ
モーニングだけで粘れる歳となる 小川のんの
遠雷にこっちへ来てと頼む夏 西垣こゆき
死してなお子孫養う百余歳 松岡ふみお
センソウのかけらを知っている痒さ 坂倉広美
何をしていますか雨の日曜日 橋倉久美子
それは皮肉ですかと念を押している 北田のりこ
うっちゃりが効かなくなった四十代 落合文彦
的をつく意見を投書欄で知り 浅井美津子
寄せ書きを黙って置いて子ら帰る 鈴木裕子
必要なことだけ話す執刀医 加藤吉一
戦死した親に曾孫を見せる盆 長谷川健一
孤独死か我が身をそっと重ね合う 水野 二
お祭りへ二十年ぶり着る浴衣 竹口みか子
大根おろし清涼剤にして真夏 野村しおひ
あずきバーだけでは凌げない猛暑 吉崎柳歩
分からないようには包めないスイカ 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 199号から                                      丹川  修

南天の葉でおしゃれするお赤飯  北田のりこ
 
何時もお孫さんとのふれあいを大切にされているご様子の作者。そのお孫さんのお誕生日か。朝から赤飯を炊いてゴマ塩とそして南天の葉でさらにおしゃれする。この「おしゃれする」に和まされる。難を転ずるとしての縁起物の南天。成長を願う目尻の下がった作者の姿がくっきりと見えてくる。

お昼寝をしなかった分早く寝る  鈴木 裕子
夕食が済んだら眠くなってくる  安田 聡子
 
人間らしさがぷんぷんと漂ってくる。天真爛漫なお孫さんのことか。いいえご自身のことだろう。今日一日を懸命に生きた充足感。ああやれやれ快い疲れが眠気を誘う。極めて平和な一コマを詠まれた両句にホッとさせられる。

反論はよそう聞く耳ついてない  沢越 建志
 
わが社にも我が家にもこんな相手はいる。全くもって同感。拍手喝采。しかし裏を返せば、自分にもついていないかも知れぬ。用心をせねばとふと思う。

過去は過去楽しい酒を流し込む  高柳 閑雲
 
私はかなり引きずるタイプで、自分でも損な性分だと思っている。嫌な事は早く忘れて美味しい酒を飲みたいと思うが、ただ単に飲んでいるだけでむしろ虚しくなるばかり。さっさと過去を過去とする極意を教わりたいもの。「流し込む」の表現に過去を断ち切るべく強固な意志が滲み出る。

にんげんを疑うことはないツバメ 吉崎 柳歩
 
近所の家に今年もツバメが飛来し、雛を孵し新しい家族と共に飛び回っている。昔から益鳥として大切にし、巣や雛に悪戯をすることを禁じてきた。その為かツバメの方も人間に対し疑うことはない。正しく相思相愛である。手の届きそうなところへも平気で巣を架けている。
 「にんげん」と平がなを用いたところなどはとても真似が出来ない。

                                   (津市在住・亀山川柳会会員)

8月28日(土)例会より
宿題「 沈む 」 青砥たかこ 選と評
  沈むのが嫌いでいつも笑い顔 松本諭二
  落し蓋おしおきしてる訳じゃない 北田のりこ
 秀 下手に慰めてますます沈ませる 吉崎柳歩
沈んでるところは見せぬいじっぱり 青砥たかこ
宿題「 ヒット 」 鈴木裕子 選
  ヒットしたわりに中味のない映画 青砥たかこ
  牽制で刺されてふいにしたヒット 吉崎柳歩
 秀 ヒット打つ流した汗を忘れない 長谷川健一
タジン鍋ヘルシー家族に大ヒット 鈴木裕子
宿題「 ヒット 」 水谷一舟 選
  イチローのヒットまたかとテレビ切る 鈴木裕子
  おじさんのギャグもたまにはヒットする 吉崎柳歩
 秀 ヒットしたわりに中味のない映画 青砥たかこ
マスコミが騒ぐイチローノーヒット 水谷一舟
互選 席題「 遠い 」 高得点句
 9点 遠いほどうれしい君を送る道 橋倉久美子
 6点  そう遠い未来の話でない介護 竹口みか子
  目覚まし時計のひとつは遠い場所に置く 橋倉久美子
  悟りには遠く水着に目が泳ぐ 吉崎柳歩
  千円のおかげで遠い目的地 松本諭二
 5点 遠いから」行けないなんてただの嘘 松本諭二
  合格に遠い偏差値だったのに 北田のりこ
特別室

紙類絶滅考(3)雑誌
                                            清水信 

  時代はすでに、ペーパー・レスの世に突入しているという。
 なんだか、ユーウツである。
 自分がパソコンもケイタイもファックスも持たず、インターネットにも、デジカメにも、ブログにも不案内で、電子時代についていけないという口惜しさもあると思うが、何よりも偏愛してきた、紙の上に文字を書き連ねるという表現方法を、少年時代に選んでしまったという生涯の錯誤が、もはや訂正し難いからである。

 プロへの道を避けて、自分は同人雑誌を選んだのである。ということは、つまりは表現としての「文学の自由」を自分のものにしたのである。

 多くの政治家のはまっているツイッターや、ギャルの間で流行している「自分磨きノート」も、たいへん短い言葉だし、大衆がそういう短い文章を、メールやブログに次いで選んだことと、文学の表現の問題とは、根本的に違う。

 自分は、名古屋以外にも、津、四日市、鈴鹿で開かれる文学研究会に出席しているが、最近の傾向は淋しいことだが、
「前」とか「元」とかの人材が8割。
「現役」とか「未定」が残りの2割。
 こういう構成であって、同人雑誌が老人雑誌と世間から、からかわれても仕方のない沙汰になっている。

 元教師、元新聞記者、元公務員などの他、元会社員、元労組幹部に並んで、元作家、元詩人、元女、元新人賞受賞者、元希望あり、今絶望と言った連中である。元船員、元軍人、元スポーツマン、元ギャンブラー、元旅行者といった者もいるが、現役を張っている作家や、未熟不安定の未来形という人も、ごく少い。
 文学表現者として現役に賭けるという人の少なさを嘆いている次第だが、これがペーパーレスの時代が来て、一瞬に否定されることが、つらい。

 それでも、九州くらいの広さの森林が、紙のために、一日一日伐採されている地球のことを考え、そのために地震、洪水、山崩れ等の天災の被害が異常に甚大になっていることを考えると、環境保護の面から、それも止むを得ないかと思う。
 雑誌や書籍が、現在の形を消滅させて、電子プレートになるとしたら、出版業界も、書斎や書店や、図書館も、随分カタチが変ってくるだろう。

 そういう今世紀最大の変化を見届けるためには、もうその時間は自分には残っていないのだが、読者諸君にしても、多分同じことだろう。時代の先端を駆け続けることは、誰にしろ、難しいことなのである。

                                                               (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 交わす 』
  9 酌み交わす日も夢に見る肩車 福井悦子
   爽やかにエールを交わす覇者敗者 山本 宏
  8 お喋りなインコと交わす今日の愚痴 鍋島香雪
  病室で交わす言葉に気をつかう 鍋島香雪
    お話を交わせば解けるわだかまり 高木みち子
   妻からのサインどれもが変化球 沢越建志
   天敵とエールを交わすのも度量 吉崎柳歩
     フェイントも混ぜて交わしているサイン 加藤吉一
   7   聞き上手やんわり向きを変えられる 沢越建志