目次11月号
巻頭言 「 課題 」
すずか路
・小休止
・柳論自論
・没句転生
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・インターネット句会
・みんなのエッセイ・その他
・大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
柳歩
松本諭二
たかこ


清水 信
久美子
柳歩

 
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巻頭言

 課題

 川柳はおおまかに言うと「自由吟」と「課題吟」がある。
 毎月の編集の仕上げに二か月先の「課題」を考えているのだが、これがなかなか難しい。まず、題の内容を動詞か名詞、あるいは副詞、形容詞の分類を心がけながら二つ選ぶのであるが、作りにくい題だったとか、広がらないなどブーイングが出る。(自分が一番言っている)

 個人的には、どちらかといえばプラスよりマイナス思考の題が好きである。なぜなら「楽しい」とか「明るい」といった題の場合深い句が作りにくい気がするし、また披講されている句を聞いても、似たり寄ったりの句に思えてくるからだ。へそまがりなのだろうか、「苦しい」とか「暗い」なら張り合いよく作れるのではないかと思ってしまうのだ。

「課題吟」も、すべて自分のことを詠まなくてはいけないのかという質問があった。
 また女性が「夫」の立場になって詠んだりすると、しらけたりすることがあり、時々問題になる。あまり堅苦しいことは言いたくないが、出来る限り「自分目線」で作句するほうが、抜けたときも達成感があるのではないかとも思う。
と、なるとやはり「課題」がマイナス思考の題だと、実感句や体験句は作りにくいということもある。
 文芸だから、小説のように「創作」でもいいと思うが、あまりに現実離れをしてしまっては逆に面白くないということになる。
「課題」が名詞の場合は読み込んだほうが無難だとか、動詞の場合は自動詞、他動詞に気をつけなければならないなど、気にしだすと大切な事ながら、どんどん難しくなってしまいそう。作句以前の問題を今頃になって真剣に考えている自分に気がつき、苦笑してしまった。

 秋が深まりつつあるこれから、川柳大会が目白押しである。「課題」に向き合い、自分らしい句を詠みたいものである。

                                                            たかこ            

 

すずか路より
コップ酒今日一日の愚痴を聞く 高柳閑雲
喋られて時間のかかる美容室 加藤峰子
交替で肩の荷下ろす秋の旅 山添幸子
打開策ここは私が折れておく 水谷一舟
山道で自己主張する毒きのこ 加藤けいこ
音痴なのは忘れて孫と合唱す 小川のんの
長湯して今日の疲れにケリつける 松本諭二
膝が痛い腰が痛いと旅行する 石谷ゆめこ
待合室で元気ですかは不釣り合い 岩谷佳菜子
すぐ切ると言って始まる長電話 西垣こゆき
遺産分けみんな欲しいと言わぬ額 松岡ふみお
投げ返す石を選んで負けている 坂倉広美
運がいいひとつ空いてる駐車場 橋倉久美子
余裕みて出れば渋滞していない 北田のりこ
後ずさりするから前に進めない 落合文彦
あの道もこの道も好き万歩計 鈴木裕子
右利きには食べにくそうな左箸 加藤吉一
脱原発言ってエアコン付け放し 長谷川健一
修理屋の無料に少し気が咎め 水野 二
受け取って欲しいと投げた変化球 村 六草
朝風呂の私一人に舞う落ち葉 竹口みか子
冬支度妻がマフラー編んでいる 瓜生晴男
忘れんぼミョウガのせいにしておこう 安田聡子
産地見るそんな自分が少し厭 芦田敬子
病院のロビーで開くクラス会 小嶋征次
男性を見る目が少し甘くなる 鍋島香雪
スローなど許さぬような大都会 小出順子
動脈に恋の予感がほとばしる 鈴木章照
冗談と本音並べて老いている 沢越建志
IQは凄いが常識には疎い 山本 宏
熱燗のゆげに恋する時期がくる 青砥英規
かたづけが終わった後もある仕事 吉崎柳歩
十年の節目虫食い穴探す 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 213号から                                    松本 諭二

この夏も帰ると言えず切る電話        竹口みか子
 実家が遠方だとなかなか帰郷できないものです。でも、たまには両親に元気な顔を見せてあげたいものですね。

発泡酒よりもビールの方が良い        瓜生 晴男
 我が家は、諸事情でそうも言っていられません。作者は常にビールを飲める環境なのでしょうか。そうなら、とてもうらやましい・・・

着飾ってアピールしてる毒キノコ       小出 順子
 自然界は不思議。綺麗なものには毒があると言われています。人間界も綺麗な人、着飾っている人は、毒を持っているのでしょうか。気をつけなければいけません。

監督の迷いチャンスがフイになる       沢越 建志
 ペナントレースも終盤。監督の迷いで、せっかくのチャンスがフイに・・・迷いは、選手にも伝わります。監督は、迷わず、どっしりと構えて試合に挑むのがいいようです。

よく売れていると言われて止めにする     山本  宏
 よく売れているイコール大勢が持っている。その商品を手に入れてしまうと、個性がなくなってしまうかも知れませんね。

潮時はまた来る次もきっと来る        高柳 閑雲
 何をするにも潮時というものが、あるのでしょうか。川柳においては、潮時関係なく、生涯ずっと続けていきたいものです。

茶の味が変わった妻の反抗期         水谷 一舟
 お茶の味に変化が現れたときは要注意。さて逆に、ご主人の反抗期には、いったい何が変化するのでしょうか。

秋告げる雨に私も生きかえる         加藤けいこ
 今年の夏も暑かった。ましてや節電志向。雨が降り、朝晩涼しくなって、やっと本来の活動ができることを嬉しく詠んだ句。

使いこみ遺言状を書き換える         石谷ゆめこ
 人生を楽しむためには、適度にお金が必要です。でも、作者は、度を過ぎて使ってしまったのでしょうか。遺言状書き直しです。

三重県の標識肩が軽くなる          西垣こゆき
 他県への旅行の帰路、三重県の標識を目にすると、ほっと一安心。でも、注意してください。安心しすぎて、事故を起こしてはいけませんから。

この世よりにぎやか天国の句会        橋倉久美子
 川柳界で活躍された方々、天国でも、お知り合いの方々と句会を楽しんでいらっしゃることでしょう。さぞにぎやかに・・・

非常時に役立ちそうな山道具         吉崎 柳歩
 何も無い山の中で、テント泊もできる山道具は、まさに非常時に力を発揮しそう。大きな地震の後、寝袋等が飛ぶように売れたようです。

やることはあるが眠たいときは寝る      青砥たかこ
 眠たいときに無理をしても、能率が上がりませんよね。仕事するときはする!遊ぶときは遊ぶ!眠たいときは寝る!作者は、人間の鏡です。そんな作者をとても尊敬してしまいます。

                                  (鈴鹿川柳会会員・四日市市在住)

10月22日(土)例会より
宿題   「 違う 」 吉崎柳歩 選と評
  悩んだあげく違う答を書いている 松本諭二
  これまでの人とは違う愛し方 青砥たかこ
 秀 容貌がちょっと変わった総入れ歯 北田のりこ
芸術の芸とは違う隠し芸 吉崎柳歩
宿題 共選「 渡る 」 加藤峰子 選
  繋いだ手はなして渡る丸木橋 吉崎柳歩
  人が作ったつり橋渡る猿の群れ 竹口みか子
 秀 吊り橋を渡り切るまで笑えない 鈴木裕子
ひた走る橋の向こうのあなたへと 加藤峰子
宿題 共選「 渡る 」 水谷一舟 選 
  定年が間近渡りをつけておく 水野 二
  三途の川渡る浮き輪を予約する 青砥たかこ
 秀 浅瀬ばかり探して渡るから遅い 加藤吉一
世渡り下手女の嘘に丸められ 水谷一舟
席題 互選「 歌 」 高点句
 6点 お婆さんの罪な音痴の子守歌 加藤吉一
 5点 黄門様の歌が流れていて平和 吉崎柳歩
  老いてまだ演歌で酔わす達者ぶり 水野 二
  好きな歌聞かれて歳の嘘がばれ 芦田敬子
 4点 歌い出し遅れたままで歌い切る 西垣こゆき
  マイカーの中で歌えば歌手もどき 吉崎柳歩
  淋しい日父は軍歌を口ずさむ 水谷一舟
特別室

矢須岡信『数え歌』
                                              清水 信

 なき虫信は矢須岡信。
 かん筋信は佐高信。
 むっつり主役は佐分利信。
 なごや弁の高井信。
 その他、十人ばかりいる「信」仲間で、親愛感を持ってきた者たちに、自分は「あだな」を付けて、別あつかいしてきた。
 長編小説『名古屋の逆襲』(87年)を書いたSF作家の高井信(57年、名古屋生まれ、東京理科大卒)は、「タカイ」でなく「タキャア・シン」と呼んでくれと、読者に注文を付けている。

 本誌213号(9月刊)で、矢須岡信の死を知って、驚いた。県の芸文協の仕事や文学賞のイベントで、何度もお会いしたことがあり、涙を流すのも三度ほど見たので、懐しくも心痛んだ。
 青砥たかこさんの巻頭言や、吉崎柳歩さんの「前号印象吟散歩」にある追悼の言葉が身に沁みた。8月21日の死で、享年81歳。教会での告別式だった由。
 矢須岡句集『数え歌』は、書庫に蔵ってあるはずだが、いま急には出てこないので、青砥さんの文章から、その作品を孫引きする。

・棺に寝てからみんな気付くのだと思
 
・こたえたなあライバルがハンサムで
  ・好きですと言われて少しずつ好きに

 青砥さんはまた、短詩型部門を列挙するのに、「詩、短歌、俳句、川柳」という風に、いつも川柳が一番あとになることに怒って、「なんでや」と吼えていた矢須岡のことに触れている。自分にしても、投稿欄はあるにしても、新聞の月評欄で「川柳」が除外されていることには憤りを覚えるが吼えるほどではない。長ものでも概ね、自分の従う批評は、いつも最下位にあるからだ。

 ところで、『瓶の蓋』評において、自分が抽象論をしたことで、当の作家である吉崎柳歩さんから、その前号で批判をされていて、びっくりした。「没句転生」や「柳論自論」の読みちがえらしくて、恐縮した。

 青砥さんの「脳動脈瘤の記録」も、まさに即時具体の切実さに満ちた記録であるが、具体を文章に変えた場合に、すでに抽象作用が働いて、我々は見ているのだ。自ら他の側面や性質を排除しなければ(捨象という)事物あるいは表象の必要な性質や側面を引き出して把握したり、描いたりすることは出来ないのだ、という解釈である。

 北田のりこが「瓶の蓋」の一句を使うミニ小説に挑戦しているが、これも具体と抽象の交流がないと、適わぬ作業だと考えられる。

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 しぶしぶ 』
 10 目を描かれしぶしぶ娑婆を見るダルマ 坂倉広美
  9 飼い主の趣味でしぶしぶ着てる服 北田のりこ
  振り向くと影がしぶしぶついてくる 青砥たかこ
  8 老人にしぶしぶなっていく命 吉崎柳歩
  7 叱られた元上司への御香典 小嶋征次
  あなたしか居ないと役を持たされる 沢越建志
  再手術同意書に判つかされる 青砥たかこ
  断れず掛けた保険に助けられ 関本かつ子
  6 丸く治めるためにしぶしぶ握手する 北田のりこ