目次24年5月号
巻頭言 「 鮮度」
すずか路
・小休止
・柳論自論
新・人と句「 乾 和郎さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ・その他
・大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
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柳歩

清水 信
久美子
新家完司さん

たかこ
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巻頭言

 鮮度

 魚の話である。
買い物好きの主人がパック詰めの生魚をよく買ってくる。鯵であったり鰯であったりするが、どうしてもスーパーで買うものは鮮度が落ちている。どんなに「お刺身に出来ます」とあっても、ちょっと引いてしまう。
最近、釣が好きな人と知り合いになった。時々釣ったばかりの、鯵や鯛、鯖を届けてくれる。身も締まりピッチピチ、てんぷらなどにするのは勿体ないほどだ。

肉の話である。
以前スーパーのモニターをしていたとき、月に一度モニター会議があった。その時、牛肉のパックの中で肉汁が出ていて見た目が悪いという意見を言った人がいた。シューケースの蛍光灯にオーストラリアのビーフは嫌な赤さに映るとも。
 そばにいた店長が誰に言うともなくボソッと言った。
「牛肉は、透き通るような赤さより、少し黒ずんできたくらいが一番旨いのだが」と。
 生鮮食品の鮮度は刻々と落ちる。いかに早く店頭に並べるかが勝負であると思う。

 川柳の話である。
 季刊号の柳誌の近詠には旬はあまり意識されない。だが月刊誌は、旬が売りだと思う。ところが編集の都合などでそうも行かないところもある。
 新年号に、お年玉の句、年賀状の句があるのはたぶん先取りされたのだろう。ところがそこまで気が回らない人は、紅葉の句を出したりする。同じページに、季節感が入り混じる。「近詠」なら新年号とは言えお年玉はおかしいと言える。だが、柳誌を読む私たちには、完全に鮮度は落ちているのだ。

 人間の話である。
 私はずっと「今が旬今が旬だと言い聞かす」の心で生きてきた。だが、鮮度はもう戻らない。せいぜい背筋を伸ばして歩くことくらいだろう。

                                                            たかこ            

 

すずか路より
銀行に袋綴じした週刊誌 山本 宏
廃線の向こうの先にある昭和 高柳閑雲
人が出る場所に集まる花見客 川喜多正道
一時間天国気分マッサージ 加藤峰子
食べられる人形焼きは笑ってる 青砥英規
道草をしながら染めて行く余白 山添幸子
人間が死ぬ音ですか風が鳴る 水谷一舟
なんとなく買ったくじだが当たりくじ 小川のんの
パトカーに出合ったとたんベルトする 石谷ゆめこ
髪型でちょっと雰囲気変えてみる 岩谷佳菜子
杉花粉背負って下山したらしい 加藤けいこ
野の花も名札立てれば箔が付く 松本諭二
よく肥えた土筆だけれど墓地の中 西垣こゆき
念入りにレシピをメモしそれっきり 松岡ふみお
言ってやりたい言葉はいくらでもあるが 坂倉広美
スリッパの元気のよさも新学期 橋倉久美子
人恋しげに空き家の桜咲いている 北田のりこ
秋よりも入学式に合う桜 落合文彦
いいカメラ持つ人多い花見客 鈴木裕子
手術後の頃合いを読む見舞客 加藤吉一
挙手の礼うけた桜が散っている 長谷川健一
脱ぎ出して幹事慌てる花見酒 水野 二
穏やかであなたのような海が好き 竹口みか子
杉花粉妻を苛めて遠ざかる 瓜生晴男
里山へ鳥の啼き声聴きに行く 安田聡子
母の日のついでに父の日も祝う 芦田敬子
三日目は筍よりも白い飯 小嶋征次
恋の句を詠むには歳をとり過ぎた 鍋島香雪
疲れたか脱いだブーツが折れ曲がり 小出順子
お見舞いにベッドのほうが良くしゃべる 鈴木章照
ブーメランとんだ悪態持ち帰る 沢越建志
札束を撒いて創ってきた神話 吉崎柳歩
妹が病んでくすんで見える空 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句3「乾 和郎さん」                                                                                         たかこ

暇よりも財布に都合聞いてみる
上司より出来て見事に飛ばされる
加熱処理しても汚名はそそげない
嫌な奴相手も思う心理学

スタートで入れ込みすぎたのが響き
ドリンクのCMほどは出ぬ効き目
偶然の続編期待するポスト
昇り詰め糸のつらさを知らぬ凧

現職のうちにと父は娘をせかす
源氏ならマンガで読んだことがある
老境へ夫婦の波長合ってくる
直球の友の助言に気が晴れる

一言の波紋津波となってくる
人妻の距離で付き合う友選ぶ
ぽっくり寺の住持入院したそうな
ひらがなを入れて会話を和ませる
ライバルに花持たされて負けている

一つだけ誰にも見せぬチョコレート
街角に空き家のような駐在所
大阪は大阪弁で考える
人望を生前葬で確かめる
糟糠の妻が恋人だと気づく

4月28日(土)例会より
宿題   「出る 」 吉ア柳歩 選と評
  デザートが出ても満腹感がない 青砥たかこ
  幽霊が出たので箔がついた井戸 橋倉久美子
 秀 ケンカした顔は遺して家を出る 小出順子
花粉症なのでしばらく出てこない 吉崎柳歩
宿題 共選 「 予定 」 加藤吉一 選
  逆らって出所予定がまた狂う 杉本憩舟
  孫受験予定に入れて旅支度 石谷ゆめこ
 秀 予定していた素麺が届かない 橋倉久美子
断れるように持ってる仮予定 加藤吉一
宿題 共選 「 予定 」 鈴木裕子 選 
  予定外ある日夫婦が別居する 水谷一舟
  今度いつ逢えると恋はいま佳境 吉ア柳歩
 秀 予定していた素麺が届かない 橋倉久美子
お葬式だけは書けない予定表 鈴木裕子
席題 互選 「 耳 」 高点句
 8点 お隣の耳に入れない当たりクジ 川喜多正道
  象の耳ないしょ話も聞こえそう 小川のんの
  耳元で美女がささやくから転ぶ 吉崎柳歩
 7点 耳をつけ替えて出かけるコンサート 橋倉久美子
 6点 耳出して命預ける膝枕 杉本憩舟
  福耳のはずの夫が花咲かぬ 小出順子
  顔よりも耳の形で決めた縁 加藤吉一
特別室

詩人・加藤恵子
                                              清水 信

  川柳作家にとって、詩人は伯父さんであり、歌人は伯母さんである。俳人はイトコだが、小説家は隣りの人で、文芸評論家は向いの家の人である。そんなつもりで、このシリーズをしばらく続けている。従って、いずれ小説家としての青砥たかこや橋倉久美子、西垣こゆき、小川のんのらのことを書くと、姉妹が分家して隣同士に住人がいる気分になるだろう。

本誌では、すでに中堅となっている加藤恵子は先きに出色の詩人だったという前歴があって、その位置を決めるのが仲々難しい。
 加藤恵子の第一詩集『ヘンリー・ジェームズも書きのこさない』(一九九〇年一〇月、京都白地社刊)は、その瀟洒な造本といい、その収録詩篇23篇の内容と言い、前衛詩人のトップランナーにふさわしいものであった。
自分のような前衛狂にとっては、タイトルだけでも奮いつきたくなるようなものが多い。小説家でも、詩人でも、作品のタイトルのつけ方が、余りにも下手なのが多くて、鼻白むことが多いので、ここに少し引く。

「そのひとときの倦怠が」
「形見の猫に言うたとて」
「カプリ島まで流されて」
「この日、円はロンドン市場でも最高値」
「エリオット湾へはいくだろう」
「まんじりともしない夜は」
「天候が回復するまで」etc。

きょうはあなたがチェーホフ
樺太の樵も泣くというシベリヤの伐採へ
うすい塩スープと黒パンだけで
ふりあげる斧が
すばらしい切れ味で利いてくる
       (「訊問」より)

 そう語りかけられたら、誰だってサハリンを歩くチェーホフになってしまう。
 ブッキッシュなボキヤブライに満ちているので、余程の読書家でないと、この秀れた女性詩人の世界は理解できないと思う。
 しかし、それをふくめて、彼女は優雅な散歩道をゆっくりと歩いているようにみえる。川柳の作品についても、その余裕が、あるいは作品の特質になっているかも知れない。
「冗談の噴水にもぬれて/語りあかせば思想と詩想の区別がつかない」と彼女は創作の動機を「孔雀館」という作品の中で、語っている。

 ▼四日市市北条町4‐1    加藤恵子

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 さっぱり 』  応募84句
 12 ほめられたわけがさっぱり分からない 坂倉広美
  9 さっぱりとしたくて判をついてやる 青砥たかこ
  8 客足はさっぱりだけど戸は閉めぬ 坂倉広美
    思いきり捨てて押し入れ広くなる 福井悦子
  7   魚屋に寄り道してる釣り帰り 小出順子
   6 点 さっぱりと忘れたはずが夢に出る 加藤けいこ
   挨拶もないお隣の新家庭 関本かつ子
  花粉症目を取り出して洗いたい 岩田眞知子