目次24年8月号
巻頭言 「 審判員と川柳」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 浅井美津子さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
たかこ




清水 信
久美子
木本朱夏さん

たかこ
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巻頭言

 審判員と川柳

  ロンドンオリンピックが開幕して日本人選手の活躍に一喜一憂させられている。
ところが、柔道や体操の判定の結果が翻るという珍事が続いている。 十二年前のシドニー五輪の柔道決勝で、「内股すかし」で明らかに篠原選手が勝ったのを、未熟な主審と副審の一人のために相手側の内股一本勝ちにされてしまった。この世紀の誤審の反省から、今回初めて「ジュリー(審判委員)」という上告制度みたいなものができたらしい。このジュリーが、主審副審より権限を持っているため、結果がすんなり翻ったらしい。

 私も高校時代、部活で柔道をやっていたが、今の国際ルールの柔道とは「似て非なる」競技と言っていいかも知れない。お互い有利な組み手に拘り、開始から何分も組み合わない。相手が膝をついた状態からでも強引に転がして、背中を床に着けたら有効や技ありになる。日本人選手の多くには、本来の「一本を取る柔道」への拘り(美意識)があるが、そんなものはスポーツ柔道に徹する外国人の選手や審判には通じない。誰の目にも明かな勝利こそが、スポーツの醍醐味ではないか。

 「芸術にはこうすべきという正解はない(宮田亮平)」という、まことに都合のいい名言がある。つまり、芸術には勝ち負けの基準はない、ということだろう。もし、現代川柳が芸術の範疇にあると自認するなら、句会はともかく、大会という名の「競吟川柳」が大手を振っているのは何故だろう?

 特選、入選、○○賞、などと勝ち負けを奨励しておいて、その基準はたった一人の、出自不明の選者に委ねられる。そしてその結果については、「正解はないのだから」と、選者も主催者も知らん顔である。上告も出来ない。

 かく言う私も、鈴鹿市民川柳大会や、三川連の大会の主催者の一人として、この悪しき習慣の存続に手を貸して来た。川柳を価値ある文芸として、広く一般に認知してもらうにはどうすればいいのか、呻吟しているのである。

                                                            柳歩            

 

すずか路より
退院をしてから童話書きかえる 坂倉広美
考えるのもめんどうでワンピース 橋倉久美子
子等が来る母はうれしく忙しく 北田のりこ
休日に出勤してもボランティア 落合文彦
わたしにも女子会という食事会 鈴木裕子
がん検診今年も不安なく受ける 加藤吉一
デモを見て安保世代の血が騒ぐ 長谷川健一
参道を鳩に従う宮参り 水野 二
愛犬が写真撮られる散歩道 竹口みか子
梅雨明けを待って散歩も車椅子 瓜生晴男
熱帯夜夜中の二時に目を覚ます 安田聡子
坊さんも足下みればスニーカー 芦田敬子
童心が今も抜けないおばあちゃん 鍋島香雪
携帯はストラップなど欲しくない 小出順子
風呂掃除するたび出来るスクワット 鈴木章照
家族葬済ませましたとある頼り 沢越建志
夕焼けは私に味方してくれる 尾アなお
亡き娘母の血潮となって生き 神野優子
素うどんを食べてる顔が僕の顔 山本 宏
顔パスで今日も正門から入る 高柳閑雲
つまみ食い許してくれる冷蔵庫 川喜多正道
朝ドラがないとスタート遅れ気味 加藤峰子
この町の人になるため出る祭 青砥英規
遠花火恋は喜劇になる別れ 水谷一舟
ポストまで年々距離が遠くなる 小川のんの
となり町悪事のうわさすぐ届く 石谷ゆめこ
パン作り匂い隠せずおすそ分け 岩谷佳菜子
返答もしたくないほど暑かった 加藤けいこ
アルコールの補給だけでは身が持たぬ 松本諭二
宿題をよそに放してくれぬ本 西垣こゆき
飛び込んだ蛙は矢張り平泳ぎ 松岡ふみお
地方大会初戦で負けている母校 吉崎柳歩
焼そばを買うためだけに出る祭り 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句6「浅井美津子さん」                                                                                      たかこ


新顔のノルマ助ける気で払い
口下手の足りないとこを妻が添え
七人の孫の個性に虹を立て
頃合いで詫びて夫の舵を取り

頼られては困るが無縁仏に花
つっかけで走る近所の救急車
小鮒追う子らにいじめの影はなし
子離れが上手子の部屋物入れに
閑のない人 閑人に気を使い

理想とは別の姿で老いはじめ
髪染めてシルバーシート座らない
信号へ急がぬ顔と急ぐ顔
通訳は新婦国際披露宴

頂上に着くと苦労をみな忘れ
生きがいを掴む気力の好奇心
O型の所為かさっぱりしてる孫
道聞かれ信号の数指を折り
歳の差が煮炊きの味に出てしまう

陰へ呼び直して上げる帯結び
招待の席へ咳止め飲んで行く
若い気がビデオの自分見て嘆く
老い二人静かに座するクリスマス

 

7月28日(土)例会より
宿題 「振 る」 吉崎 柳歩 選と評
  張り子の虎だから微妙に首を振る 北田のりこ
  ペンライト振って衆愚の中にいる 坂倉広美
 秀 手を振って別れたけれど振り返る 加藤けいこ
日の丸を素直に振っている五輪 吉崎柳歩
宿題 共選「濃 い」 小川のんの 選
  濃い文字が決意の固さ感じさせ 芦田敬子
  濃い味に母思い出す味ご飯 加藤吉一
 秀 退院後我が家の味の濃さを知る 石谷ゆめこ
濃い色に染めて人生もう一度 小川のんの
宿題 共選「濃 い」 坂倉 広美 選
  内容が濃すぎて箸が進まない 橋倉久美子
  濃い色で塗りつぶされていた汚点 北田のりこ
 秀 くちづけの前に拭き取る濃いルージュ 吉崎柳歩
アイシャドウ濃くし猛暑をやりすごす 坂倉広美
席題 「  氷  」 清記互選
 8点 彼女より氷を抱いて寝たい夜 吉崎柳歩
 6点 ついさっきまでかき氷だった水 橋倉久美子
  氷にも感情がありキューと泣く 長谷川健一
  氷より冷たい言葉投げられる 青砥たかこ
 5点 「マダイタノ」氷のようなご挨拶 坂倉広美
  ドライアイス棺の中は涼しそう 吉崎柳歩
  働いてグラスの汗となる氷 北田のりこ
特別室

俳人・寺田京子
                                              清水 信

 俳人・寺田京子は終生病身をかこちながら、昭和51年、アカシアの白い花が咲き乱れる札幌の街で、54年の生涯を終った。
 幼少時に父の赴任に伴い、両親と共に満州(中国の東北部)へ渡ったが、その時胸の病いを得たと思われる。父は昭和製鋼所に勤めていた。
 京子は鞍山の女学校に入るが、病気のため中退、札幌に戻り、重症患者として入院した。
 療養者のための雑誌の投稿で、栗木重光選の句欄で作句を始め、やがて天野宗軒の『水声』高橋貞俊の『水輪』斎藤玄の『壺』そして加藤楸邨の『寒雷』森澄雄の『杉』に加わっている。

 第二句集『日の鷹』は昭和43年に刊行している。

・日の鷹がとぶ骨片となるまで飛ぶ

 この句が、そのタイトルとなった代表作である。(『俳句あるふあ』より)

 30歳の時、ひたすら看病に当っていた母を亡くし、やがて父も急逝。兄の家に同居したが、独立して生計を立てたいと放送作家の道を選んだ。
 幸いにして北海道放送のドラマの台本を次々と書いて収入を得たが「ぜいぜい言いながらの苦闘の仕事」でありながら、収入は得るものの、脚本なんて放送が終れば、すべて屑箱行きで、線香花火のようなものだという諦めもあって、本業は俳句だと思った由。

 慢性呼吸不全で、長い歩行にも耐えられなかったが、飛翔を夢見て、鷹、鷲、鳶、鳩など天空を飛ぶ鳥の名をよみ込んだ作品が多い。
 白いベレー帽が良く似合って、求婚されることも度々だったが、応じられる体調ではなかった。

『冬の匙』『鷲の巣』『雛の晴』等の句集があり、現代俳句協会賞も得た。

・少女期より病みし顔映え冬の匙
・郭公の一息一息肺鳴らす
・嫁かぬ身の微笑頼みや枯れつくす
・未婚一生洗ひし足袋が合掌す

 こういう風な句境には同情を禁じ得ない。さらに哀傷句を引く。

・白菜洗う死とは無縁の顔をして
・死は独りにくる絶望の雪鴉
・セルを着て遺書は一行にて足りる

▼東京都千代田区一ツ橋1‐1‐1          毎日新聞社内

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 本気 』  応募74句
 18  禁煙を本気にさせたレントゲン 鈴木裕子
 14    わずかでも金を賭けると出る本気 北田のりこ
 12    訓練と分かり本気で走れない 吉崎柳歩
 
 11
 
 本気だな出された酒に手をつけぬ 水谷一舟
 
 10
 
 ライバルという妙薬で出た本気 北田のりこ
   7  本気だとわからぬように本気出す 小川のんの
     途中から馬も本気になってくる 吉崎柳歩
     わたくしが本気になると消える人 岩田眞知子