目次2月号
巻頭言  「読みやすい柳誌に向けて 」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり

・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン     
・お便り拝受
・各地の大会案内他
・編集後記

 



たかこ
整理  柳歩

堤 伴久
村山 了
たかこ

柳歩
清水信
橋倉久美子
柳歩

 









 

巻頭言
読みやすい柳誌に向けて

  これまでもあったが、今年になってから立て続けに数名の方から「『川柳すずか』は字が小さくて読み辛い」というお声を戴いた。一生懸命編集をしても、読んでいただかなくてはなんにもならない。小さな活字の柳誌は他にもあるが、読み比べてみると二つの相違点がある。
  一つはプロ(印刷所など)にワープロ清書を任せているところの柳誌は、文字送りが鮮明である。我が柳誌は 、家庭のパソコンに打ち込みプリントアウトしたものを、これ以上安く仕上がらないというぎりぎりの線まで下げて印刷をお願いしているためだろうが、微妙なところで読んでいて疲れてくるようだ。
 もう一つは、行間にゆとりがない。車間距離のないドライブのようなもので、これも疲れやすいようだ。限られたページ数の中に、あれもこれもと詰め放題詰めてしまう。それも例会が終わると同時におもむろに打ち出していくのだから、心の余裕もなく、印刷に出す前日まで校正に追われ、ばたばたと発行。隔月発行にするとか、一月遅れにしたらという意見も戴くが、鮮度が失われるし、どたばたするのは同じだろう。
 日がな一日パソコンの前で、ああでもないこうでもないと知恵をめぐらせていれば、もう少しましになるのかもしれないが、諸事情でそうもいかない。
 ならば、すこしずつ改善をしようではないか、まず読んでいただかなくてはどうしようもないのだから。
 頑張ります。

                                                                                                                                                    たかこ

すずか路より
ひと休みすればまだまだ食べられる 橋倉久美子
孫の句は嫌いわたしは子がいない 上田徳三
無欲でも当ててはくれぬ宝くじ 山本喜禄
さしあげた後も気になる虫食い菜 小嶋征次
好きでした所詮あなたは絵の女 竹内そのみ
周囲との違い楽しむ天の邪鬼 鍋島香雪
毛筆を走らせ気分とり戻す 山本鈴花
知恵の輪が解けてスタートやり直す 沢越建志
ため息になすすべもなし茜空 鈴木章照
ペンを持ち考えるふり得意技 青砥英規
何歳になっても恋しふるさとよ 木村彦二
足と脳使えるうちに古稀の旅 鶴田美恵子
さあて妻よあれをああしてくれたかい 堤 伴久
ぐるぐると巻きつき解けにくい絆 寺前みつる
男のエゴ愛は小出しになど出来ぬ 水谷一舟
醒めた眼で時々ロボットになろう 井垣和子
降りる駅まで指折っている五七五 内山サカ枝
宴席で新聞読んでいる阿呆 吉住あきお
Vサインして監視カメラを通る鬼 坂倉広美
一応は書いたが作らないレシピ 北田のりこ
整列はちょっと苦手な葱坊主 多村 遼
更年期ドアをたたいている動悸 高橋まゆみ
バレンタインあげたい人はひとりだけ 東海あっこ
くいしばる奥歯まだまだ元気です 鈴木裕子
栄転の上司は知らぬ後始末 加藤吉一
ユニークと評せば誰も怒らない 小林いさを
Uターンすぐに二人に戻る初春 竹内由起子
じいちゃんが一番うまいこま廻し 長谷川健一
豚汁のひきたて役はごぼうかな 安田聡子
雑念を捨てれば写経筆進む 瓜生晴男
二人の花実りの時はきっと来る 上田良夫
禁煙でベンツ買えると医者が言い 羽賀一歩
鏡の中の僕がときどき嫌になる 吉崎柳歩
狂い咲きする花たちを笑えない 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 156号から                                                                 村山  了

    川柳とはあなたと私が 自分の
    ことばで人間とはこんなものでは
    なかろうかと話し合う文学である
            (
日本川柳協会)

・ファインダーを通して人間を覗く   疋田 真也
  
保育園で子ども達を撮り続けて六年になる。お母さんたちが「ウチの子のこんな顔みたことない」と
  喜ばれる。開放されて自由に遊ぶ子ども達の顔は天使、レンズはそれを見逃さない。

・不安よりなんとかなると前を向く   青砥 英規
  
先日七十九歳のマンション独り暮らしの老人が突然動けなくなった。最近よくあるケースだ。「なんと
 かなる哲学」をひつこく説明、リハビリへ通わせたら元気を取り戻した。不安は無駄な試行錯誤だ。

・私でもブーツ履いてもよいかしら   安田 聡子
  老人保健施設「蛍」では女性の部屋に鏡を置くことを義務付けている。死ぬまで美しく輝いて欲しいか
 らだ。「ピンピン生きてコロリ」が私たちの仕事のテーマであり願望。

・向かい合うより横に座って欲しい人  北田のりこ
  
このごろ妻が横に座りだした。お互いの自由時間が増えている。家庭内分業が進み、ゴミ出し、風呂沸
 かし、屋外の掃除など私の仕事になった。反面、句友と旅行や食事の回数が増え前と横の関係が怪しくな
 ってきた。

・夫婦凧互いの空でもつれない     青砥たかこ
  
先日妻のお茶会に誘われた。無駄な待ち時間、作法をなじったら「あんたのやっている福祉だって自己
 満足じゃないの」と切り替えされた。

                              (四日市川柳会 四日市市在住)

 
1月27日(土)例会より
宿題「負ける 」 青砥たかこ選
  すぐ負けるから弁当はいりません 橋倉久美子
  血統書見せられ負けたなと思う 鍋島香雪
 止 言い訳をすると惨めな負けになる 吉崎柳歩
 軸 やる前に気力ですでに負けている 青砥たかこ
宿題「わざわざ」 竹内由起子選
  自宅まで届けてくれた忘れもの 水谷一舟
  わざわざ礼にやってきたのにそっぽ向く 吉住あきお
 止 近くまで送り善意の家さがし 水谷一舟
 軸 ジャンボくじ評判のいい名古屋まで 竹内由起子
宿題「わざわざ」 東川かずこ選
  しんせつに夫の不倫つげに来る 上田徳三
  遠回りしても行きたい春の海 鈴木裕子
 止 わざわざが嬉しいあなたのありがとう 高橋まゆみ
 軸 蝋梅を訪ねるための回り道 東川和子
折句「いのし・し」 清記互選 高点句
 6 生きてます残り時間も知らぬまま 橋倉久美子
  いい目覚め脳が元気に始動する 山本 宏
 5  いつの日か載るかも知れぬ死亡欄 吉崎柳歩
 4  いつからか残り時間に支配され 青砥たかこ
  胃薬を飲んでグルメの仕事する 鍋島香雪
  いいのです飲むだけ飲んで死ねるなら 橋倉久美子
 
特別室

水府と聖子(1)

 集英社版『田辺聖子全集』が完結した上、NHKの朝ドラで、自伝的物語「芋たこなんきん」が放映されたりして、一寸した田辺聖子ブームである。
 私はヘンジンなので、田辺聖子の本を
10冊余り持っているが、全集には入らない、変った作品を主に愛読している。例えば、次のような本だ。

イ『恋する罪びと』
ロ『ときがたりデカメロン』
ハ『無常ソング』
ニ『妾宅・本宅』
ホ『私本・源氏物語』
ヘ『ほどらいの恋』
ト『人生の甘美なしたたり』

 もっとも、杉田久女、一茶、吉屋信子、与謝野晶子、樋口一葉らを扱った評伝小説の大部分は、今度の全集にも入っており、何よりも川柳作家・岸本水府の評伝長編『道頓堀の雨に別れて以来なり』の全集入りは、うれしい。一見タラタラした川柳鑑賞読本のように見えるが、その文献の豊富さや、大長編に仕上げた情熱は、たいへんなもので、川柳作家でなくても、大いに興味をそそられる伝記である。

「佐佐木信綱はおかしな男だ。あいつの顔を見ていると、不思議とわたしに歌ができる」
 という内藤湖南の体験談から、この長編は始まっている。それは詩人だって、川柳だって、小説だって、俳句だって同じことで、一流の創作者の顔には、そのジャンルの仕事を、周りの者に促がすような気配が漂っているのである。怠けていたが、あの人の顔を見たら、何か書きたくなったし、書けるような気がする、と思わせる指導者が、弟子にとっては一番の存在なのである。

 大阪で「水府はん」と親しげに呼ばれていた岸本は伊勢の出身。明治25年2月鳥羽市で生まれる。大阪成器商業卒、新聞記者の他、化粧品、衣料、洋菓子などの製造会社の宣伝部を転々。17歳ごろ川柳を作り始めたという。「番傘」を表明したのは昭和5年のこと。

 友達はよいものと知る戎橋
 千日前肩を叩くと連れになり
 電柱は都へつづくなつかしさ

 現代川柳の目で見れば、水府作品は古風でロマンティックすぎるかも知れないが、品の良いやさしさは否定できない。
 原点を観るという意味で、しばらく水府文学を紹介したい。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信
誌上互選より 高点句
前号開票『 合格 』
11 合格で治った母の不眠症 水谷一舟
  ギリギリの合格だとは分からない 吉崎柳歩
10点 とりあえず合格はした滑り止め 北田のりこ 
    合格をするまでだった神頼み 山本 宏
 9点   合格に遠い彼氏を連れてくる 吉崎柳歩