目次11月号
巻頭言 「 読み込み不可
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン     
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

柳歩
吉道航太郎
たかこ

柳歩
清水信
橋倉久美子
柳歩









 

巻頭言


 読み込み不可

 

右ページに早くも来年度「第六回鈴鹿市民川柳大会」の案内を発表しました。読み込み不可の題は、「悩ましいこと」。

これまで「とんでもないこと」「うらやましいこと」「厚かましいこと」に続いて四題目です。


「とんでもないこと」の秀句は

・等身大の穴が二つ掘ってある


「うらやましいこと」

・両手に花いささか草臥れてはいるが


 そして「厚かましいこと」

・鳴っているエレベーターに動じない


でした。

これらがもし普通に題を読み込んでいたら、こんな奇抜でおもしろい句にはならなかったと思います。

 このごろ「題」を出すときとても悩みます。今月の「芝居」も大ブレークでした。村芝居、紙芝居と古臭い内容の句が並びました。出すときはもう少しスマートな句が出るかと思いましたが「芝居」という言葉そのものが古かったようです。

小説などの「題」は読者を読む気にさせるかどうかがかかっています。「題」が決まれば半分は仕上がったようなものと言えなくもありません。

川柳はやはり「広がりのある」「作り甲斐のある」題がいい作品を生むようです。「題」を考えるのは本当に悩むところです。

今年のアフォリズムも、十月二十八日、公開審査会が終了しました。川柳では出尽くしているような内容のものが見事に一行詩となっていました。

来年、「悩ましいこと」を、どう表現するかも腕の見せ所ですが、アフォリズムも傾向と対策で頑張ってみたいところです。

                                                                                                                                                    たかこ

すずか路より
ドック入り胴の回りも測られる 橋倉久美子
妻が待つチャタローも待つ帰らねば 上田徳三
栗きんとんもらってうまい茶が入る 鈴木裕子
愛してるなんて言わない夫です 鍋島香雪
みそ汁に卵ひとりの昼ごはん 山本鈴花
お茶漬けを食べてファイトがでるもんか 山本 宏
うっかりを数えていたら切りがない 沢越建志
飢餓の子にグルメ番組見せられぬ 鈴木章照
鬼になり仏になった子育て記 竹内そのみ
気がつけばもう何年も同じ服 青砥英規
気になるな夕暮れ時に鳴くカラス 鶴田美恵子
新品の靴が自慢で履き歩く 木村彦二
そんなことなら一行で済む手紙    堤 伴久
少し間をとれば笑えたのにと悔い 寺前みつる
風も秋去年別れた女のこと 水谷一舟
匿名になると尖るペンの先 山本喜禄
フウセンカズラの袋に秋が詰めてある 坂倉広美
蜂蜜をたっぷりかける淋しい日 北田のりこ
泥棒も盗っていかない下着干す 高橋まゆみ
自分よりでかい息子に気を配る 小嶋征次
乾燥の痒さも話題クラス会 加藤吉一
いい時代だったと語るクラス会 竹内由起子
うちの人ケンカ相手もしてくれる     安田聡子
新米のおにぎり三個食べすぎる 長谷川健一
晩秋の雨人恋しさが募る 瓜生晴男
赤福に容赦はしない秋の風 水野 二
病欠の休み明けには日焼け顔  上田良夫
寅さんにも僕にも辛いことがある 吉崎柳歩
どこにでも行こうチャンスが落ちている 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

  165号から                          
                                           吉道航太郎

 ・友だちのその友だちに聞いてみる   堤  伴久
 
ワンクッション置くと「真実」が見えて来るものです。「友だち」のリフレインがよく効いた句です。

・ゴキブリも死んだふりする知恵がある  安田 聡子
 死んだふりして急場を凌ぐのも一つの処世術です。ゴキブリの強かさに拍手を送ります。

・ゆずれない日課金魚にエサをやる    岩田眞知子
 
人それぞれに日課も違って当然です。「ゆずれない」に作者の優しさがにじみ出ています。

・諦めているから続けられている     青砥 英規
 高望みしないから息切れも無く長く続けられるのです。「うがち」の効いた佳句だと思います。

・エジソンの汗を熱帯夜に想う      坂倉 広美
 
自熱電灯の熱さが伝わって来ます。発想の斬新さに脱帽です。

・推敲をするたび淡くなるこころ     橋倉久美子
 
推敲をして良くなったつもりが、無味乾燥な作品になっていることがしばしばあります。推敲の難しさをつくづく思います。

・お盆だけ一升釜で炊くご飯       長谷川健一
 
帰省した子どもの家族と一緒に食卓を囲む情景が見えて来ます。老夫婦の目も輝いています。

・品のない食べ方をするシュレッダー    吉崎 柳歩
 
食べ方を見るとその人格さえも見えてくると言います。料理人の「こころ」をいただく食べ方を心得たいものです。

                                                                                       (堺番傘川柳会・貝塚市在住)
  
10月27日(土)例会より
宿題「 芝居 」 吉崎柳歩選と評
  よそはよそうちの芝居はいま見頃 坂倉広美
  公共の電波で流す猿芝居 山本喜禄
 止 家でする芝居職場でする芝居 橋倉久美子
 軸 芝居から醒めて別れることになる 吉崎柳歩
宿題「 きっちり 」 小嶋征次選
  きっちりと印押してからする握手 加藤吉一
  きっちりと詰めて割り込みさせません 北田のりこ
 止 きっちりと締めた財布に穴があく 長谷川健一
 軸 きっちりと使う年金残さずに 小嶋征次
宿題「 きっちり 」 青砥たかこ選
  お付き合いだけはきっちりしておこう 小嶋征次
  きっちりとしていたものは表示だけ 上田徳三
 止 客のないバスがきっちりやって来る 吉崎柳歩
きっちりとくじめをつけた丸坊主 青砥たかこ
 
特別室

新聞にて

  新聞が好きだ。
 客観的に見ても、マスメディアの中で、一番初めに絶滅するのは、新聞である。その「白鳥の歌」を聴けるために、一層新聞がいとしいのである。私はいつも、沢山の新聞を読んでいるが、川柳の扱いに不満だ。
 中日新聞「中部の文芸」は、第一週小説、第二週詩、第三週評論、第四週短歌、第五週川柳、第六週俳句、第七週戯曲、として紹介、批評のサイクルを回すべきだ。柳誌の批評・鑑賞、紹介をちゃんとしていかなければならないと思ってきたし、今も思う。

 朝日新聞は西木空人選で柳壇を設けているが、狭い。

・いそいそと顔出す派閥の管理人            鈴木弘人

 福田新内閣への風刺だが、弱い。穴うめ川柳など、やめることだ。

 読売地方版では、千葉朱浪選の「とうかい時事川柳」がある。

・獅子舞が突然脱いだ獅子頭                松本喬司

「評」には「小泉前総理の後釜」として登場した安倍首相に対し「閣僚の不祥事や参院選惨敗」と病気での突然の退陣。「まさに獅子頭を脱ぎ捨てた獅子舞に見える」とある。全国版の「よみうり時事川柳」でも尾藤三柳選でも、常陸太田の斉藤松雄の一作、

・美しい国が変色する九月

 が挙げられており、似たような政界風刺。

 同じ日(9・23)の別の新聞では、毎日新聞が問題だ。

「サラリーマン川柳」通称サラ川と万能川柳と二つの企画があるのは、結構だが、サラ川の方では、秀逸が、

・スッピンで我が子を抱けば泣きやまず(ヘチマ)

 の一作、その他掲載作のすべてが、へんなペンネームで困ったものだ。
「読み人知られたがらず」や「庶民の味カ」や「一日五百円のパパ」とか、「ダメ夫」「キャロット」など、ふざけている。

 第一生命がスポンサーのこの欄と違って、「仲畑流万能川柳」は全国版で、投稿者の住所まで書く。しかしこちらも「柳名5文字まで」という制約ながら殆んどは下らんペンネームだ。「ドド子」「竹とんぼ」「ありの実」「コーちゃん」「月あかり」「水戸浪士」などである。

 時実新子の死によって『川柳大学』は終刊したが、彼女はバカバカしい匿名が書くことを、生涯投稿者に禁じたものだ。それは正しい処置だったと思う。

 風格のある筆名は、充分愛せるが、バカバカしい匿名は、逆に個性や才能を滅却するものである。他には柳誌紹介という作品抄出欄が結構多い。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信
誌上互選より 高点句
前号開票『 爆発 』
   爆発をして後悔をまた増やす 小嶋征次
   爆発をせぬよう怒り小出しする 青砥たかこ
    信管はまだある僕の不発弾 吉崎柳歩
  爆発が人の心を引き締める 織田信勝 
  爆発へ点火するのはいつも妻 山本鈴花
  爆発をしたのは思いがけぬ人 吉崎柳歩
  家庭平和妻の地雷を踏まぬよに 北田のりこ
    掘りおこすと爆発をするかも知れぬ 鈴木裕子