目次26年9月号
巻頭言 「 椅子にまつわる話A 」
すずか路
・小休止
・柳論自論「川柳イグアナ論(上)
・没句転生
川柳・人と句「 板野美子さん」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・お便り拝受・エッセイ・その他
・大会案内
・編集後記
 

たかこ
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ


清水 信さん
久美子
永井玲子さん


たかこ


 
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巻頭言

「椅子にまつわる話A」 

 喫茶店の椅子を思い浮かべてみると、二種類あることに気付く。ふんぞり返ってしまいそうなほどクッションのよく効いた椅子。もう一つは木製の座布団が欲しくなるような椅子。

 どちらの椅子も長く座っていると疲れる。実はそれが狙いであることも、喫茶店の経営者は考えたりするのだ。もちろんすべての喫茶店がそんな狭い考えでやっているのではないだろう。
 モーニングサービスが売りの店なら、客の入れ替わりでしか儲からないから、椅子にも心を砕いているはずだ。

 自慢を書くつもりはないが、現在私が事務用に使っている椅子はかなりの優れものである。実は、座ったままうとうとするのが常で、以前の椅子は腕置きがなくて何度か椅子から落ちた。50センチ以上の高さから眠ったまま落ちるわけで、その都度腰を強かに打ってしばらく動けないことがしばしばだった。よほど骨が頑丈だったか、二日もすると傷みは引いた。

だが、こんなことではいつか大怪我をしてしまう…。そんなとき知人の家で座り心地の良い椅子に出会ったのだった。聞くと、生協の通販で買ったとか。イタリア製らしいが値段も諭吉さん一人で済むとか…手頃で一目ぼれをしてしまった。知人に頼んで注文をしてもらった。迷いは全然無かったのである。

 数日で大きな箱に詰められ椅子はやってきた。黒いレザー張りで、座るところが広い。リクライニングが何段階もある。寝るときは椅子の下から足置きがたっぷり出る。肘置きがあるから、横にすべり落ちることはない。もう、サイコー。

 かくして、私のお昼寝タイムは「眠い」と思うと同時に椅子を操作するだけ。何の迷いもなく夢の世界へ滑り込んでいけるのだ。一日の大半をこの椅子で過ごす私にとっては、親友のような椅子。皆さんの椅子は座り心地はいかがですか?

                                        たかこ            

 

すずか路より
エアコンに捕まえられて動けない 松岡ふみお
見たこともない仏を信じようがない 坂倉広美
警報の中郵便が来てくれる 橋倉久美子
新聞もせんべいさえも湿気る雨 北田のりこ
ショッピング監視カメラに囲まれて 河合恵美子
散歩とは速さが違うウォーキング 落合文彦
ときどきは一服もする蝉の声 鈴木裕子
風鈴を吊したけれど風がない 長谷川健一
海と山日本列島荒らされる 水野 二
朝ドラで涙ニュースでまた涙 竹口みか子
猛暑にもゴーヤの蔓は威勢よく 瓜生晴男
古くてもズボン止まれば良いベルト 加藤吉一
盆踊りかっこつけずに自分流 安田聡子
適当に見つけて欲しいかくれんぼ 芦田敬子
広告に縋り新聞生きている 圦山 繁
知らぬ振りして何もかも知っている 鍋島香雪
風呂敷を誰も広げぬクラス会 小出順子
積極的平和といって武器を買う 鈴木章照
田舎には不釣り合いです電波塔 高柳閑雲
戦地ならすぐにくたばる柔な僕 川喜多正道
蝉時雨テレビの音を二段上げ  石崎金矢
美しい形で開くパラシュート 柴田比呂志
独身の息子送って涙ぐむ 加藤峰子
溶けてきたアイス電話が落ち着かぬ 西野恵子
鼻先にきな粉をつけて詫びにゆく 青砥英規
予防接種のように電話をしたくなる 尾アなお
棚卸しハンドバッグの領収書 岡ア美代子
草むしりあわてて逃げるだんごむし 神野優子
風花に私の余命問うてみる 外浦恵真子
花好きの姉にバラ持つ墓参り 寺田香林
唇を読んでサインがわかる仲 瀬田明子
脈が飛ぶあなたの前にいるだけで 前田須美代
献体と決めて夫婦の語が揃う 水谷一舟
勲章のようね離婚を慰める 加藤けいこ
おにぎりと菓子用意して待つ嵐 小川のんの
思い出し笑いの顔が映る窓 石谷ゆめこ
ばあばにはきゃりーぱみゅぱみゅわからない 岩谷佳菜子
じいちゃんに内緒で掛ける互助会費 西垣こゆき
年金で足りそう仙人の暮らし 吉崎柳歩
あきらめて見ると案外広い空 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句31「板野 美子さん」                                                                                 たかこ


エプロンのポケット恋人がいます
美しい錯覚だろう霊柩車
どの橋も脆くて虹がかからない
降りるのは終着駅の天国で
犯人のいないドラマなら見よう

売っているなら自販機で恋を買う
常識の壁がどんどん削られる
一生に一度を何度でも使う
うっかりと覗いてしまう空の箱

水たまり飛べば文房具屋の前
文豪の海に溺れる人嫌い
数え切れない善と悪です信号機
雀の宿を探しつづける認知症

さよならの手紙はバラの棘で書く
女盛りと書いて遅れた年賀状
幻の情事は月の裏側で
さるすべり散って季節は腰の位置

計算は苦手女に武器がない
めくるめく想いひまわりまだつぼみ
幼な子のように日傘を折りたたむ
月の砂漠の砂を下さいお手玉に
始発駅忘れて使えない切符

 

8月23日(土)例会より
宿題「借りる」 青砥たかこ 選と評
  せっぱつまってライバルに借りる知恵 吉崎柳歩
  借りものと思い優しくする夫 加藤峰子
 止 鈴木さんに認めを借りる鈴木さん 西垣こゆき
 軸 いい夢を見たくて借りてみる枕 青砥たかこ
宿題「逆」(共選) 水野 二 選
  居心地が悪い先輩より上座 西垣こゆき
  正論を言うこともある天邪鬼 吉崎柳歩
 止 間違って天地無用を底に貼る 青砥たかこ
 軸 逆説に抵抗感は否めない 水野 二
宿題「逆」(共選) 杉本憩舟 選
  逆立ちをしたら内臓目を回す 小出順子
  仕返しの訳が分からぬ逆恨み 川喜多正道
 止 逆臣が歴史を担う本能寺 外浦恵真子
 軸 逆なでの傷に塩までなすりつけ 杉本憩舟
宿題「自由吟」 吉崎柳歩 選と評
  審判に寛大すぎる甲子園 加藤吉一
  目薬が流れ迷惑する頬っぺ 加藤峰子
 止 口紅を落とすと声が低くなる 青砥たかこ
 軸 胎内にいたころ思い出す壺湯 吉崎柳歩
席題「ためらう」(互選)
 6点 心にもためらい傷の二つ三つ 杉本憩舟
  ためらわず息子を使う嫁と孫 圦山 繁
  老人会をためらっている六十五 芦田敬子
 5点 御礼状ためらい時期を見失う 圦山 繁
  ためらわず進んだ道が行き止まり 加藤けいこ
 4点 カーナビはためらう事が出来ません 岩谷佳菜子
  イケメンでためらうこともない見合い 水野 二
  やや音痴いつもためらうマイク前 加藤吉一
  ためらいをみせてはならぬ牽引車 吉崎柳歩
  ためらうから一杯飲んで行く抗議 加藤吉一
  避難勧告ためらうひまはありません 青砥たかこ
  ためらった一つのミスでくるいだす 石谷ゆめこ
 
特別室

 『川柳塔』のこと                                      清水 信

 多分青砥たかこさんの御紹介によるものだろうとは思うが、『川柳塔』という雑誌の四月号を送って戴いて、ビックリした。通巻一〇四三号に当るという、長い誌歴である。文学同人誌や結社誌は「長く続けば良いというものではない」と皮肉気に言う人もいるが、本当は「持続こそが光り」である。

 更にA5版五二〇ページの『麻生路郎読本』という大著まで戴いて、恐縮した。送り主は、和歌山市中之島八七一木本朱夏である。先ず感謝したい。
 その著作については、中日時評の評論部門の収穫として、軽く触れたが、『川柳塔』の内容については、この欄で当分話題に困らぬほど、教えられることがあった。

 第12回鈴鹿市民川柳大会は六月二十二日に済んで、その総括も本誌で行われたが、十月四日に開かれる「川柳塔九十周年記念大会」は、「第二十回川柳塔まつり」とも称して、大阪天王寺のホテル・アウィーナ大阪で実施予定。
「文化人とは誰を言うのか」という『上方芸能』誌の木津川計の講演があって選句、表彰、講演会に入るらしい。
 選句に当るのは、川柳塔社同人の他、川柳文学コロキュウム、びわこ番傘及び番傘川柳本社の面々だが、賞の名前が路郎賞、愛染帖賞、檸檬賞、一路賞などとあるのが、地方句会でありがちの市長賞、市議会議長賞、教育長賞という風な権威もたれでない所が良い。

『麻生路郎読本』は、二段組・三段組みで細かい字で構成されているので、四百字詰め原稿用紙で換算すれば、ゆうに千枚を超す大著で、路郎文学のすべてを語りつくしている観がある。その半分量を占めるのが、東野大八の「麻生路郎物語」という小説風評伝である。

 東野大八は、戦後北京から引揚げてきたという、自分と同じ体験があって、『没法子北京』という中国体験を描いた長編小説(一九九四年六月、蝸牛社)を、岐阜から贈られ、書評も書き、手紙による交流もあった。
 ジャーナリスト出身らしく、淀みのない筆致に、自分としては多少のとまどいがあったが、『川柳大陸』や『東亜川柳』という柳誌で、大陸時代からの執着のあった川柳への関心は本物だと思えた。
 十五年に及ぶ、東野の中国体験は、もちろん自分に倍するものであったが、六歳年上の東野に対して、同世代の意識を持っていた。

・人生は二幕三幕ほどがよい            橘高薫風

 この項、つづく。

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『散る・散らす』  応募87句
 1 9  散りぎわをふと考える手術室 加藤けいこ
   悪気なく書類を散らす扇風機 橋倉久美子
 1 1  少数の意見蹴散らす民主主義 圦山 繁
   散り時をまだ決めかねている造花 吉崎柳歩
   9点  散り際も自信に満ちた夏花火 神野優子
     救急車去ると野次馬散って行く 福井悦子
    8点  散り際になっては詠めぬ辞世の句 吉崎柳歩
      散った日もゴミを拾ったサポ−ター 加藤吉一
    6点   散れという軍歌に酔ったことがある 坂倉広美