目次28年3月号
巻頭言 「 桜島」
すずか路
・小休止
・柳論自論「雑俳と課題吟」
・没句転生
川柳・人と句「私の周りの柳人たち」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・エッセイ・あしあと
・大会案内
・編集後記

たかこ
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ
たかこ

清水 信さん
久美子
岡本 恵さん





 
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巻頭言

「桜島」

 二月十九日、妹を誘って「南日本女流川柳大会」に鹿児島まで出かけた。事の発端は半年以上前、たった一言のメール。
「たかこさん、即殺してもいいですよ。女流大会の選お願い出来ませんか」と石神 紅雀さんから来た。紅雀さんはホームページでおなじみの太陽の陽子さんである。陽子さんとは一昨年秋の「温泉川柳」でおなじみになった。

 二つ返事とまではいかなかったが、何しろ遠い。一人で行くほどの度胸は無い。だけど女流大会である。同行を頼める人も限られる。いました。旅行を兼ねたら妹が行ってくれるかも…。妹は「鹿児島は行きたいと思っていたからええよ〜」でした。

 直前に桜島が噴火、また突然に沖縄にまで雪が降るこの異常気象、果たしてその日がきちんと来るのだろうかと内心ヒヤヒヤだった。
二月十九日、鹿児島まで伸びた九州新幹線「さくら」は終点の一歩手前の駅「川内駅」で私たちを降ろしてくれた。駅に自家用車で出迎えてくれた作務衣の陽子さん。その日の夜中まで入来町の案内や、おいしい地鶏が食べられるお店、ホテルへの送迎、などと至れり尽くせりであった。

「らくらく」の選には、達筆ばかりの句箋にタジタジしてしまった。

・火の島に抱かれ噴火が子守唄

この句を見たとき私の手が止まった。噴火を繰り返しても桜島はこんな風に愛されていたのか…。特選はこれしかないと楽に決まった。そして披講、誰のだろうと呼名を待つ私の耳に「石神紅雀」とハスキーな声が返ってきた。え?まさか、陽子さんの句だったの…、良かったという思いと、分かっていて抜いたのではと思われないだろうかの気持ちが交錯した。だがそれは杞憂に終わったと信じている。

                                                                     たかこ            

 

すずか路より
間引かれた苗のおかげで伸びた苗 北田のりこ
食べたいな志摩サミットのフルコース 河合恵美子
積もるのは困る雪ダルマは見たい 落合文彦
馬鹿話こぼれて花のある職場 毎熊伊佐男
ええ湯だナ一人で惜しい湯を流す 鈴木裕子
線香の残り火気にし読むお経 長谷川健一
良い方の耳が相手の方を向く 水野  二
市報掲載がんばってると励まされ 竹口みか子
誰も居ないどこか淋しい冬の海 瓜生晴男
校庭の走る距離だけ揚がる凧 加藤吉一
耳をすましてウグイスを待ちわびる 安田聡子
申年で赤い下着をプレゼント 芦田敬子
倒れるまで手抜き工事と分からない 圦山 繁
体調が悪い時には離陸せず 千野 力
正直な気持ち介護にギブアップ 鍋島香雪
ゴミの日はカラスも寝坊しておれぬ 小出順子
売り言葉買ってはくれずネコに向け 鈴木章照
建前は丸めて溝に流そうか 高柳閑雲
シンバルを一発だけで同じギャラ 川喜多正道
あちこちに呼ばれ後期も忙しい 石崎金矢
ライバルという距離感が難しい 柴田比呂志
言いました初めて聞くと老いふたり 竹内そのみ
思い出す稀に痛みを伴って 樋口りゑ
さびしいね先が見えてるクラス会 加藤峰子
ベランダの蛍が消えるこの寒さ 西野恵子
マンションの窓から愛でる雪景色 瀬田明子
車から犬も顔出す春うらら 青砥英規
六年生肩に小さなランドセル 寺田香林
富士山の絵は描いてないウチの風呂 西山竹里
この人に時間盗られる立ち話 岡ア美代子
タラを採る日が早くなる温暖化 日野 愿
処女作は母と娘の生きた道 神野優子
チョコレートちょっとリッチなわたし用 上村夢香
おばちゃんになって誘惑ドッと減る 前田須美代
万札を拾うつもりで行く競馬 佐藤近義
時代劇近頃妙にほっとする 岩谷佳菜子
断りの返事亡夫のせいにする 西垣こゆき
同病で知らぬ同士が盛り上がり 松岡ふみお
耳に掌をあてても春が聞こえない 坂倉広美
アドバイスだとも余計なお世話とも 橋倉久美子
わたくしが行かず倒産したお店 吉崎柳歩
ジパングの割引き土産分が浮く 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句48「私の周りの柳人たち」                                                                              たかこ


             松本 諭二

いい仕事してうきうきと帰る道
愛煙家きっと高額納税者
うさぎにも跳ぶのが苦手なのはいる
銭湯の滝では修行などできぬ
満足のいく自分にはまだ会えず
今日もまた蝶追い求め日が暮れる

             山添 幸子

定位置を確かめたくてする電話
もやもやが晴れず出掛ける美容室
期限切れ無くて突然花粉症
道草をしながら染めて行く余白
これからへ健康保つ舌下錠
ものになるキャッチボールを手にしたい
見ない振りしないでそっと教えてね

             青砥 和子

コンビニで待ち合わせするおばあさん
卒業式風の中から荒井由美
流し台の下に溜まった母の声
遠い目をしただけで席譲られる
押すな押すな神も仏も富士登山
ワイドショー同じ話は二日まで
父方の目母方の鼻持て余す

 

2月27日(土)例会より
宿題「猿(申)」 青砥たかこ 選と評
  お猿のような顔の子減った新生児 北田のりこ
  ボス猿がまた答弁をはぐらかす 吉崎柳歩
 止 申年でギャラアップした猿回し 北田のりこ
 軸 申年の今年飛躍を考える 青砥たかこ
宿題「困る」(共選) 芦田敬子 選
  しらたきの長さに困り果てた箸 橋倉久美子
  修理部品なくて困っているアトム 加藤吉一
 止 神様を困らせている百度石 吉崎柳歩
 軸 真夜中に迷惑メールやって来る 芦田敬子
宿題「困る」(共選) 川喜多正道 選
  核心をつくから困る顔をする 芦田敬子
  困らないようきちんと書いた遺言書 鈴木裕子
 止 テフロンが剥げへそ曲げるフライパン 北田のりこ
 軸 聞く耳がないから困らない総理 川喜多正道
宿題「自由吟」 吉崎柳歩 選と評
  くしゃみ百回花粉に鼻腔つつかれる 西垣こゆき
  サボテンの植え替え勇気出してする 橋倉久美子
 止 寒風が吹きこむ猫が開けたドア 千野 力
 軸 同情はして貰えない飛蚊症 吉崎柳歩
席題「和む」互選 高点句                     
10点 和やかな仮面もひとつ入れておく 樋口りゑ
 9点 ボス猿が帰ってからの座が和む 吉崎柳歩
 8点 和んではいるがパートと正社員 吉崎柳歩
 7点  穏やかな方言に触れ和む旅 川喜多正道
 6点 トゲ抜いてやればサボテンさえ和む 橋倉久美子
 5点 上役が失敗をして和む席 西垣こゆき
特別室

 スマート三誌                                       清水 信

 前回の続きになる。

 俳句の方では、雑誌も句集も、歳時記もたれで、どうしても古臭いタイトルになるけれども、川柳の方では逆に洒落れている方が良い。『ますかっと』(岡山市)や『ふあうすと』(神戸市)は洒落れているタイトルの柳誌であろう。今も続いているかどうかは、知らない。
「柳会新地図」(中川一)によると、この頃(一九七一年)北海道だけで50の川柳会があって、それぞれ機関紙を発行していたという。概ねは、四日市、亀山、鈴鹿の川柳会と同じで、『川柳さっぽろ』とか『川柳とまこまい』とか『川柳オホーツク』とか地名を冠した柳誌が多いが、『いぶり』(室蘭)とか『柳の芽』(当別町)とか『わか柳』(室蘭)とかいう誌名も見える。

 また各誌の交流欄を見ると、『青空』(徳島)『そだ火』(岐阜市)『かも』(広島)『盆地』(彦根市)等がある。

 また芸どころ金沢では、『きたぐに』の他『蟹の目』『白鳥』『こまいぬ』『りーふ』『えんぴつ』『ばんば』など、地名を離れたユニークな柳誌が、艶を競い合っていたらしい。『きやり』も創刊六百号を控えている。『川柳噴煙』も意気さかんなところを示していよう。

 これらの中の三誌に見るスマートさについて書く。

『きたぐに』20号には宇和川木耳の「中国柳壇年譜」があり、大陸での川柳事情を明らかにしている。一八九六年には日本では一葉が他界しているが、天津の邦人が増え、その間に川柳会胎動が起っており九十年には柳俳合同吟社が発会している。天津で柳誌『鴫(しぎ)』が発行されたのは一九〇二年である。こういう記録はスマートであろう。

『ふあうすと』478号では、巻頭エッセイで、ヘンリー・ミラーに触れているだけでも前衛的である。室田千尋のエッセイ「考える事の素晴らしさ」も率直で良いし、堀口塊人の「文士と川柳」も説得力がある。今回は二葉亭四迷や斎藤緑雨や荷風、龍之介、小島政二郎などに触れている。

 『ますかっと』327号では、東静人の追悼記に加えて榎本聡夢の句集『山の灯』の批評特集を組んでいる。聡夢は当時『番傘』の編集に当っていた人であった。好みの句を少し拾う。

・石段の数を忘れて海が見え
・人妻はまだちゃんづけで呼ぶ職場
・静かなるデモ警官がありあまり
・会うたびに名刺がちがう友と酔い
・万国旗たかが市場の特価デー
・頬かむり主義へ嵐はいつか止む
 

                                                                    (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 多い 』  応募94句
 1 3  正解を出すとはいえぬ多数決 芦田敬子
 1 2  ふさふさの証拠写真を持っている 西野恵子
   9  口数の多さでばれた隠し事 西山竹里
   8点  悪友が多くて今日も暇がない 加藤峰子
   7点   鬼は外もう食べ切れぬ豆の数 岩田眞知子
     胃の方が多く処理した廃棄カツ 加藤吉一
     収まった後に一言多い人 西山竹里
     戦後秘話父は多くを語らない 福井悦子