目次28年6月号
巻頭言  「横綱相撲」
すずか路
・小休止
・柳論自論「選句疲れ」
・没句転生
川柳・人と句「私の周りの柳人たち」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・お便り拝受・その他と
・大会案内
・編集後記

柳歩
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ
たかこ

清水 信さん
久美子
真島久美子さん





 
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巻頭言

「横綱相撲」

 横綱相撲という言葉は、「実力があって正々堂々と戦って勝つ」ことを言い、相撲以外でも応用されるが、肝心の大相撲では死語になりつつあるようだ。

 モンゴル出身の三横綱は、どうしても勝ちたいときは立ち会いに変化も辞さない。圧倒的実力を誇る白鵬でさえ、下位の力士を相手に張り手は繰り出すし、エルボー気味のカチ上げを食らわす。ノックアウトを狙ったような打撃に近い技は、本来反則なのだが、今の白鵬には理事長はじめ誰も文句をつけない。土俵外のだめ押しなど、逆に弁護しているようにも思える。

 私も子供の頃から相撲は大好きで、羽黒山や照国の時代からラジオ放送にかじりついていた。千代の山の「ひと突き半」と言われた突っ張りや、初代若乃花の「仏壇返し」と言われた荒技は知っているが、横綱が変化したり、プロレスのような技を使ったことは記憶にない。下位の相手には受けて立つのが横綱の矜持であったし、それで相応の成績が残せなくなったら引退するのが横綱というものであった。

 柔道も国際化して、武道からスポーツに変わって久しい。相撲もその後を追っているのだろう。スポーツであればルール違反でない限り、勝つことが優先される。礼に始まり礼に終わるのも単なる形式になってしまった。白鵬が懸賞金を鷲掴みする所作は「手刀」とは呼べない。柔道はスポーツに変身するに伴い、ルールも細分化されたが、相撲は立ち合い一つとっても曖昧なままだ。行司より検査役の権限が強いのも昔のままで、「物言い」の付け方もいい加減だ。スポーツならスポーツとして、ルールも再検討すべきだろう。

 文芸川柳を目指した現代川柳も、いつのまにやら競吟(ゲーム)全盛の「課題吟川柳」にどっぷり浸かっている。ゲームだから結果がすべてである。好成績を挙げることのみが目標になれば川柳作家としての美学も矜持も失われる。課題吟や競吟を否定するのではない。文芸川柳としての歯止めを掛けておきたいと思うのである。

 
                                                                     柳歩            

 

すずか路より
癌告知されてる友に笑われる 圦山 繁
寝た向きと反対向いて目が覚める 千野 力
涙から明るい詩は生まれない 鍋島香雪
気の抜けたサイダー意見言わぬまま 小出順子
雑草もときには水も欲しかろう 鈴木章照
ジーンズに働く人と遊ぶ人 高柳閑雲
モナリザも鑑賞しない自撮り棒 川喜多正道
大好きな季節田んぼが池になる 石崎金矢
出稽古でハートを突いて貰います 柴田比呂志
ど忘れを笑い合ってる余命表 竹内そのみ
逃げたりはしない光りが見えるまで 樋口りゑ
孫帰り淋しさバネに元気だす 加藤峰子
犬だって独り歩きをしてみたい 西野恵子
知ったふり止めて素のまま生きている 寺田香林
近いのにめったに行かぬ夢の国 瀬田明子
考えて動いてほしい浮動票 西山竹里
ああ言ったこう言われたを聞かされる 岡ア美代子
乗り心地快適だった救急車 日野 愿
繋がりはなかなか切れぬ縁です 竹原さだむ
キーワードひとつでほどかれるこころ 澁谷さくら
命日はあの日と同じ五月晴れ 神野優子
みつをの詩雨音聴いて読み返す 上村夢香
さざ波のように来た老い受け入れる 前田須美代
日が沈み水平線の大あくび 佐藤近義
鍵拾い拾った場所にまた戻す 岩谷佳菜子
目と鼻を過信していた食中り 西垣こゆき
意に添わぬ助手席いつも舟を漕ぐ 松岡ふみお
詩集読むおとこに寄ってこない蝶 坂倉広美
サミットへごみ箱までが身構える 橋倉久美子
知ってると言えず聞いてる裏話 北田のりこ
五月病こんなに緑萌えるのに 河合恵美子
「どうこうふたり」なんだとばかり思ってた 毎熊伊佐男
ほどほどの過保護で育つミニトマト 鈴木裕子
鼻歌を三曲唄い機嫌よい 長谷川健一
避けられぬ活断層の国に住む 水野  二
柔軟剤薫るぐらいが丁度良い 竹口みか子
五月雨を眺めため息ひとつつく 瓜生晴男
ボテボテのゴロでもヒットなら拍手 加藤吉一
味噌汁に意外といける黒こしょう 安田聡子
減らされたローカル線に乗り遅れ 芦田敬子
政治家の資質歯切れの良い詭弁 吉崎柳歩
竹ならばちょっと節目の十五年 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句51「私の周りの柳人たち」                                                                              たかこ


             鈴木 裕子

女子会の誘い嫁から来たメール
高すぎた枕へ匂うサロンパス
菜の花の絵手紙届く年賀状
一人では作りたくない雪だるま
持ち寄って時も忘れる食事会
足の裏ほど敏感でない頭

まだ決めてないママチャリを止める歳
長生きも死も怖いなと思う日も
食べる前描きたい種のある西瓜
出来るうちさせていただくボランティア

訳もなく今日はため息ばかりして
一錠の薬も飲まず生かされる
愛称でみんな呼び合う笑いヨガ
減塩の努力数値にほめられる

子らが来る今日は丸ごと買う西瓜
雨の日の迷うことなく派手を着る
国勢調査ネットでやった目の疲れ
十二階階段下りた足を褒め

年齢を言うと笑って許される
魚好きを覚えてくれていた上司
体力の過信をしてはならぬ歳
左手も慣らすつもりのボールペン
百均のまだ動いてる置時計

          (ここ3年以内のすずか路より)
 

5月28日(土)例会より
宿題「創立」 青砥たかこ 選と評
  開校のころはたくさんいた子ども 橋倉久美子
  引き際はかなりもたつく創立者 川喜多正道
 止 神様が創立をしたお伊勢さん 吉崎柳歩
 軸 創立を祝う記念は派手にする 青砥たかこ
宿題「減る・減らす」(共選) 北田のりこ 選
  偏食を直す妙薬腹減らす 加藤峰子
  すり減ってレッドカードが出たタイヤ 吉崎柳歩
 止 やる気ある苗は残して間引きする 芦田敬子
 軸 体重は減ったが腹囲変わらない 北田のりこ
宿題「減る・減らす」(共選) 水野 二
  あっけなく摘果されます規格外 岩谷佳菜子
  やる気ある苗は残して間引きする 芦田敬子
 止 減りつつはあるが余震はまだ続く 吉崎柳歩
 軸 歳ばかり増えて減るもの多くなる 水野 二
宿題「自由吟」 吉崎柳歩 選と評
  パスポート返してくれたパリのスリ 川喜多正道
  ロシアよりちょっと自由がある日本 川喜多正道
 止 不機嫌なままで電話に出てしまう 樋口りゑ
 軸 美女だった面影はあるお婆さん 吉崎柳歩
席題「傘」互選 高点句                     
 8点 持って出て気疲れをする高い傘 北田のりこ
   ジャンプ傘差しても跳べぬ水溜まり 吉崎柳歩
 6点 色褪せて公民館の忘れ傘 西垣こゆき
  「きのこの森」傘の部分をまず食べる 青砥たかこ
 5点  心配性いつも持ってる折りたたみ 北田のりこ
  見栄はもう張らない男用日傘 吉崎柳歩
特別室

 難破船                                      清水 信

 編集は埼玉県新座市の松本芳味、印刷は大阪市天王寺区舟橋町の文芸山水社、発行所は高槻市竹の内町の河野春三、その昭和48年の6月号を取上げるのだから、時代錯誤も甚しいと言わねばならぬ。
 だが、縁あって、この号は松本芳味の句集「難破船」の批評特集号、岐阜で会ったこの人のことを忘れられないので、書く。

「川柳は詩の化け物である。あんな簡単な形式で、音の数が17だけで、あれほど自在に、通俗に、おまけに皮肉なおかしみまで持たせて、複雑な人生の、時として含蓄の深い機微まで詠じた詩が」世界のどこにあったろうと、西原柳雨は書いている。
 鉄かつぐ老人足の
 伜が馳けて行った
 戦野
 と原文は3行書きになっているが、紙幅を惜しむため、以下1行で写す。
・縊死の後その木に花が咲いて平和
・ベトナムの少年が持つ銃に惹かれる
枯木を焚いておんなを洗う地のくぼみ
・暗い雨ふりそそぐ日に生まれしか
・売笑婦昇天魚のかたちして
・憎しみは墓まで続き蛇となれ

 いずれも暗いテーマを追っている。当節の仲良し川柳作家たちには多分不評だろう。ダーク・ストーリイに目を注ぐことを避けて通りたいと思っている人には、迷惑な素材かも知れない。しかし、ダーク・サイドは依然として、この世に存在するのである。バカになって、笑って生きろという掛け声に賛成する文学者など、どこにもいない。
 中村富二は、この人のことを「怪物」と呼んだ。この追悼特集には、清水正一、川崎敦彦、山内清など専門外の人も執筆し、時実新子も熱いエールを贈っている。
・金借りに母が行く街灯ともれよ
・搾取の縄梯子は海の底へ垂れる
・来ない平和泣くにはそろう双手の指
くるしと言えば耐えよと言ふか北風熱し
・玉手箱あけて見たらば血が溢れ

 小市民的生活を詠むだけが、川柳ではあるまい。「拒絶の文学」の生涯を生きることも、一つの文学的宿命ではないのか。非日常が定着している詩にも、存在理由はあるのだ。難解が悪いか。
 大正15年生まれ。戦中派最後の作家である。人生を笑劇化できなかった。

・難破船が出てゆく丘のひそかな愛撫

                                                                      (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 奪う 』  応募94句
 1 8  言論の自由を妻に奪われる 西山竹里
 1 1   奪われた青春が哭く無言館 竹内そのみ
 1 0  奪い合いしている内に色褪せる 小出順子
      つまらない会議に時間奪われる 橋倉久美子
   点    食欲を心配事に奪われる 水野リン子
    8    税金を補欠選挙に奪われる 吉崎柳歩
    7点  新人のロボが奪ったプロの技 よしひさ
     スマートホンみんな無口になってゆく 濱山哲也
     奪ったがどうも相手の思うつぼ 石崎金矢 
     奪い取るほどの度胸はない男 吉崎柳歩