目次26年4月号
巻頭言 「 隣の子」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 坂倉広美さん」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・没句転生
・ポストイン
・お便り拝受・その他
・大会案内
・編集後記
 

柳歩
柳歩整理

柳歩
たかこ


清水 信さん
久美子
寺前みつるさん


柳歩
たかこ


 
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巻頭言

「隣の子」

 先日、車で外出先から帰ってきたら、隣家の駐車場から通りに出ようとしてモタモタしている車に通せんぼされた。奥さんの軽自動車で、後部に若葉マークが貼ってある。運転しているのは若い男の子。長男のY君なのだろう。しばらく見守っていたが、こちらの車には気づかずに行ってしまった。 
 彼は、たしか鈴鹿市の高専に通っているはずだが、もう十八歳になるのだろう。車の免許も取得して、日々大人への階段を駆け上っている。

 私がこの地に越してきたのは十五、六年前だった。彼はまだ幼児で、「よしざきさーん、花火はじめるよう」と、誘いに来てくれたものだった。回覧板も妹と連れ立って持ってきてくれた。ところが、中学生になると外で会っても目をそらすようになった。回覧板も妹のSちゃんが一人で持ってくるようになった。女の子はさすがに愛想が良く、今でも庭先などで会ったりすると恥ずかしそうに挨拶してくれるが、回覧板はもう持ってきてはくれない。今年は高校生になるのではないか?

 私が、単なる趣味で楽しんでいた川柳の道に、本格的に参入したのも十五年前である。鈴鹿川柳会に入会して、『川柳すずか』の編集に携わるようになったのは十三年前、毎月のルーチンワーク(内容はともかく)をこなしていると歳月の流れは驚くほど早い。  人生を十五年単位で遡ってみると、十五年前は五十五歳(当たり前だが)、その前は四十歳、その前は二十五歳、その前は十歳、その前は昭和十四年で、まだ影も形もない。数字的にはまったく等間隔の各十五年であるが、感覚的にはぜんぜん違う。当然ながら十歳から二十五歳までの十五年は長い。

 私のこれから先の十五年は、あっという間に過ぎていくだろうが、隣の兄妹も、久美子さんの教え子の○歩ちゃんも、いま人生の濃密な期間を過ごしている。すべての若者たちに、平和な日本が続くことを祈っている。

                                         柳歩            

 

すずか路より
剃髪しても坊さんだとは限らない 高柳閑雲
停電にオール電化の恐怖感   石崎金矢
哀しい線だね人間が見えている 柴田比呂志
種採りと薬味に使うネギ坊主 脇田雅美
三代の女そろって雛仕舞う 加藤峰子
泡立ち草だけが夕日に映える町 佐藤彰宏
墓参り再婚しても良いですか 西野恵子
トリュフォーもフランスパンも味気ない 青砥英規
凡人の寂しい夜にピザ届く 尾アなお
記念日に酔った勢い妻をほめ 岡ア美代子
おばさまも羽生選手のファンになる 神野優子
幸せな家族に見える遺族席 寺田香林
十ヶ月待った天使が舞い降りる 外浦恵真子
初対面なのにビビッと来る予感 瀬田明子
意地っ張り鏡は先に笑わない 奥村吉風
泣きながら聴く「コンドルは飛んで行く」 前田須美代
涙目で微笑む妻に惚れ直す 堤 伴久
人を切るペンが正義をふりかざす 水谷一舟
夕映えが癒しているか兵の墓 加藤けいこ
使わない電話機隅に追いやられ 小川のんの
花まるの一日だった目を閉じる 石谷ゆめこ
人間観察時を忘れている電車 岩谷佳菜子
花粉症医者もクシャミが止まらない 西垣こゆき
薄命に逆らう美女の同期生 松岡ふみお
びっくりとさせたくて降る春の雪 橋倉久美子
濡れている時は素直になる癖毛 北田のりこ
辞書通り喋って浅学を隠す 河合恵美子
言うほども食べられぬのがバイキング 落合文彦
あれこれと思案するより笑いヨガ 鈴木裕子
戦争はバーチャルゲームしか知らぬ 長谷川健一
衣食住足りても愚痴がすぐに出る 水野 二
肩並べ歩くことさえ過去になる 竹口みか子
生きている証に今日もかく鼾 岡田たけお
妻の顔直視できない訳がある 瓜生晴男
諦めて雑巾らしくなるタオル 加藤吉一
早朝のチャイム夫に出てもらう 安田聡子
しょうもない話で終わるインタビュー 芦田敬子
老いたとは千年杉は思わない 圦山 繁
リクルートスーツの孫とツーショット 鍋島香雪
割烹着付けると出来る力瘤 小出順子
ダイオウイカ人間界は姦しい 鈴木章照
入学式まで我慢できずに咲く桜 青砥和子
出掛ける前に疲れてしまう旅支度 山本 宏
おしぼりで眼鏡拭いてもいいものか 吉崎柳歩
生み立ての春をリュックに詰めている 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句26「坂倉広美さん」                                                                                    たかこ


誤解説く努力をあじさいはしない
身辺整理握られた手も整理する
身辺整理しすぎた部屋の寒いこと
雪は温いか雪崩の中で横たわる
雑巾の絞り汁にもある答え

絆とは同じ病気を語り合う
病院迷路をすいすい歩く足の慣れ
病院へ行くとき拝む仏さま
墓の草庭の草とは違う草

蹴ろうかと思う僕をイジメた奴の墓
本人に見えない背なを評価され
洞窟に住んで出口を気にしない
情熱は時効にしない赤ワイン

優先順位はやっぱり妻のほうになる
石をどう積んでも同じ点もらう
満車ですけれども蝶ははいれます
何の比喩だろうか方程式のA

焦りからだんだん長くするタクト
音程がそれぞれ違う栗御飯
引き返すとき 残高を考える
登って下さい海抜ゼロの宿にいる
他人ごとではないが自分のことでない
 

3月22日(土)例会より
宿題「乾く」 吉崎柳歩 選と評
  ドライアイ悔し涙も出てこない 岩谷佳菜子
  飴ちゃんが無いと乾いてしまう舌 西垣こゆき
 止 乾いても元通りにはなれぬ紙 橋倉久美子
 軸 乾かないようにしている犬の鼻 吉崎柳歩
宿題「世話」(共選) 加藤吉一 選
  栓抜きの世話にならずにおれぬ栓 吉崎柳歩
  世話好きを笑うダイオウグソクムシ 橋倉久美子
 止 化粧よりちゃんと世話してほしい肌 橋倉久美子
 軸 私が笑われますと押しつける 加藤吉一
宿題「世話」(共選) 芦田敬子 選
  水やりの日課が効いたシクラメン 鈴木裕子
  あの人のお世話がしたい恋ほのか 水谷一舟
 止 子の世話にならぬと預金確かめる 圦山 繁
 軸 生まれる時と死ぬ時医者の世話になる 芦田敬子
宿題「自由吟」 青砥たかこ 選と評
  歳重ね風邪も頑固になってきた 圦山 繁
  右手では左の耳はほじれない 吉崎柳歩
 止 上がる税波打ち際が忙しい 加藤吉一
 軸 たっぷりと寝ても若さは戻らない 青砥たかこ
席題「紐」(互選)
 9点 長すぎる紐でからんでばかりいる 橋倉久美子
 8点 一センチ短い紐が結べない 西垣こゆき
 7点 昭和期の記憶となったおんぶ紐 川喜多正道
  帯締めを解くとゆるんでくる体 北田のりこ
 5点 放し飼い時には紐が懐かしい 西垣こゆき
  増税で財布の紐を締め直す 芦田敬子
  解きたい時は解けてほしい紐 芦田敬子
  縦結びエプロンだって恥ずかしい 加藤けいこ
 
特別室

 作家・青砥たかこ論(2)                                  清水 信

 私は小説マニアでもないし、文芸における小説優位説にも同調しない。
 いま時、小説オンリーで作家を評定するなど、愚の骨頂だと思っている。従ってエッセイの下手な小説家などには、興味がない。

 自分が出版屋だったら、青砥たかこの小説集(10編収録)と共に、彼女のエッセイ集を出してやりたい。
 本誌連載の「ひとくぎり」や「川柳・人と句」に永い間接してきたが、土曜会席上で配られる「たかこの世界」と併せて、柔軟な感性と深い理解力に満ちた良いエッセイと感じていて、小説集と共にエッセイ集をまとめてやりたいと感じている。

 前号で四日市文芸賞の選考委員の評言を一部紹介したが、梅山憲三委員は、文学作品には「読者への心遣い」が必要だし、そのためには言葉の優しさや美しさを確実にとらえることが求められるだろうと書いている。
 また、もう一人の選考に当った国府正昭委員は、小説・エッセイ部門の応募作のほとんどが「自分史」的な傾向を示していることに不満を表明し、小説の本命はフィクションにあり、事実や体験を生かすにしても、そこにはデフォルメがなくてはならず、フィクションの効果を疑わぬものに、小説を書く資格はないと言っている。
 その点、青砥の「ひき逃げ」は「十一月三十日」とか「十二月一日」とか日記風の章立てがしてあるところが、プライベートな印象を与えてソンをしていると言えよう。

 小説を成す底流の思想は、あくまでも「冒険」であるように、「俳句」は流浪、「川柳」は風刺であるだろう。
 そういう底流のないものは、ほとんどゼロ価値といって良い。つまりは批評精神があるかどうかだ。
 語感批判をふくめて、東日本大震災後の世相には、国府委員も「なじめない」と告発するように、変なものが多すぎて、批評精神の強弱が問われている。

 震災後の「絆」の乱発。
 ACの「花は咲く」の放送。
 各官庁、族議員の復興予算の乱用。
 国会議員削減のウソ。
 参院選。
 一票の格差是正不能。
 東京五輪招致の猿芝居。
 TV、ジャーナリズムあげての伊勢神宮遷宮の異常な宣伝。
 東京でのヘイトスピーチ。

 とりわけ「特定秘密法」の政権による強行採決――こういう事に鈍感な対応をするようでは、文学は出来ない。

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 怪我 』  応募104句
 1 8  大臣もわたしも口で怪我をする 濱山哲也
 15  絶妙に怪我などしない千鳥足 鈴木章照
  8  怪我をしてやさしくなっていくんだね 岩田眞知子
   7    自家用は怪我した野菜ばかり来る 松岡ふみお
    これが怪我かと絆創膏に笑われる 尾アなお
      カド番になると怪我でも休まない 圦山 繁
   6    消しゴムで消せる程度のかすり傷 青砥たかこ
       すぐ怪我をするのでなにも頼めない 石谷ゆめこ
        付き添いは血を見て気絶した男 西垣こゆき
        とりあえずバンドエイドで足りている 加藤けいこ
        無視される程度ですんだ恋の怪我 坂倉広美