目次26年11月号
巻頭言 「 一理ある」
すずか路
・小休止
・柳論自論「前句付けと課題詠(上)」
・没句転生
川柳・人と句「 小島蘭幸さん」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・お便り拝受・エッセイ・その他
・大会案内
・編集後記
 

たかこ
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ


清水 信さん
久美子
新家完司さん


たかこ


 
バックナンバー
23年12月(216号)
23年11月(215号)
23年10月(214号)

23年 9月(213号)
23年 8月(212号)
23年 7月(211号)
23年 6月(210号)
23年 5月(209号)
23年 4月(208号)
23年 3月(207号)
23年 2月(206号)
23年 1月(205号)
22年12月(204号)
22年11月(203号)
22年10月(202号) 
26年10月(250号)
22年 9月(201号)
 26年 9月(249号)
22年 8月(200号)
 26年 8月(248号)
22年 7月(199号) 
26年 7月(247号)
22年 6月(198号)
  26年 6月(246号)
22年 5月(197号)
  26年 5月(245号)
22年 4月(196号)
  26年 4月(244号)
22年 3月(195号) 
26年 3月(243号)
22年 2月(194号)
  26年 2月(242号)
22年 1月(193号)
 26年 1月(241号)
21年12月(192号)
 25年12月(241号)
21年11月(191号)
  25年11月(239号)
21年10月(190号) 
25年10月(238号)
21年 9月(189号)
 25年 9月(237号)
21年 8月(188号)
 25年 8月(236号)
21年 7月(187号)
  25年 7月(235号)
21年 6月(186号) 
25年 6月(234号)
21年 5月(185号)
 25年 5月(233号)
21年 4月(184号)
 25年 4月(232号)
21年 3月(183号)
 25年 3月(231号)
21年 2月(182号)
  25年 2月(230号)
21年 1月(181号)
  25年 1月(229号)
20年12月(18
号)  24年12月(228号)
20年11月(179号)
 24年11月(227号) 
20年10月(178号)
  24年10月(226号)
20年  9月(177号)
  24年 9月(225号)
20年  8月(176号)
  24年 8月(224号)
20年  7月(175号)
 24年 7月(223号)
20年  6月(174号)
  24年 6月(222号)
20年  5月(173号) 
24年 5月(221号)
20年  4月
(172号)
  24年 4月(220号)
20年  3月(171号)
 24年 3月(219号)
20年  2月(170号) 24年 2月(218号)
20年  1月(169号) 24年 1月(217号)
                         
以前のバックナンバー
巻頭言

「一理ある」 

 夏ごろから歯医者に通うようになって、歯に関する話題に興味が行く。

歯を磨く左手 ぶらり下げたまま 金子 流

新家完司さんの「川柳の論理と実践」ナンセンスなユーモアで紹介されている。本当にナンセンスなことながら、興味がわいて身近な人に聞いてみた。

まず足踏みなど足のストレッチを欠かさない人がいた。左手で洗面台の掃除をする人…時間を無駄にしない、きれい好きな人のようだ。私は…腰に手を当てて踏んばっていることが多い。だけど、ほとんどの人が句のように、なにもしないでだらりとさせているようだった。

 歯を磨くとき、歯ブラシを濡らさないほうがよいと、ある雑誌に載っていた。唾液がほどよく出て歯磨きの効果が上がるらしい。だが、あるメーカーの広報誌では「ブラシは使う前きれいな水で洗ってから〜」とある。前回磨いたときの雑菌や目に見えない埃がついていたりするからとか。

 また歯を磨くのは、食後すぐがよいと、つい最近歯医者さんで聞いた。ところが、偶然手にした専門誌には、食物にいるバクテリアが食後歯についてばい菌を殺すから、せめて30分後に歯磨きをするのがよいとあった。

たかが歯磨き…されど大事なこと。正反対の意見があって、迷うところだが、どちらにも「一理ある」ような気がする。

 優柔不断な私は、歯磨き以外でもまるきり正反対の意見に、頷いてしまうことがある。どちらにも「一理ある」と思ってしまうのだ。困ったものである。双方のよいところだけ頂くという利口な人もいる。自分の意見は絶対曲げないという頑固な人もいる。

金子みすゞじゃ無いけれど、「みんな違ってみんないい」と思ってしまうこの性格、何とかしたほうがいいのかしら。

                                        たかこ            

 

すずか路より
プロ野球ひいきチームも僕も秋 瓜生晴男
丸よりはランクが上の二重丸 加藤吉一
美しい夕陽やさしくしてくれる 安田聡子
トリックを見破るために目を凝らす 芦田敬子
大差でも笑顔をなくさない球児 圦山 繁
さよならと手を振りながら投げキッス 鍋島香雪
明日まで響かぬように湿布貼る 小出順子
品質保証一千年の紙文化 鈴木章照
頬被りすればあなたもテロリスト 高柳閑雲
慰安婦もなかったことにしたい右派 川喜多正道
OB会昔の恨み思い出す  石崎金矢
生きている実感があるハイボール 柴田比呂志
寝てる間に台風通過ありがたい 加藤峰子
襖越し聞こえるようにひとり言 西野恵子
つきまとう陰をジョージと呼んでいる 青砥英規
試供品塗りたくってる旅の宿 岡ア美代子
スランプは天気予報が連れてくる 神野優子
秋桜の道に続いている旅愁 外浦恵真子
昔なら二日かかった服選び 寺田香林
延命水飲んで十歳若返る 瀬田明子
まだ夫婦歩幅狂ったままですが 前田須美代
秋の雨破れた夢を想い出す 鶴田美恵子
私へのお仕置きだった通り雨 水谷一舟
ひっそりとマイナスイオン浴びにいく 加藤けいこ
優先順位つけて一日やりすごす 小川のんの
大自然かなり怒っていませんか 石谷ゆめこ
見なければヤキモキせずにすむ夫 岩谷佳菜子
慰めの言葉がしつこ過ぎますよ 西垣こゆき
鈴生りの柿に飽きたか鳥も来ず 松岡ふみお
台風が来る頃旅がおもしろい 坂倉広美
味ごはん自分で炊いて誕生日 橋倉久美子
約束の変更ばかりするスマホ 北田のりこ
クローゼット満たして幸せな悩み 河合恵美子
生かされている枠組みの中だけで 落合文彦
若いなあ言うてもろうて背を伸ばす 鈴木裕子
鐘だって気分良ければ三つ鳴る 長谷川健一
保険金満期あの世が近くなる 水野 二
丸顔でよく食べ笑うお嫁さん 竹口みか子
あくまでも理想 源泉掛け流し 吉崎柳歩
かたまってくるまでずっとかき回す 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句33「小島蘭幸さん」                                                                                 たかこ


めぐり逢い地球のまるさなど思い
噴水の虹ヒロシマに夏が来る
いごこちがいいので渦の中にいる
妻も長女も次女もときどき魔女になる
負け方が好きで応援団にいる

樹も僕も老いぼれてから面白い
あれは確かに北斎の波だった
入院の母を元気にする動画
肝臓のあたり大蛇が棲んでいる

かぐや姫嫁いで男ばかり産む
そんなに僕はマンボウに似てますか
二千円札はきれいなままでいる
てのひらに退職金を乗せてみる

オンリーワンという不器用もあるのです
はじめてのメールは妻に似たひとに
かくれんぼするならダリの絵の中に
愛子さまと同じ絵本を買ってくる

暗証番号いつか忘れるときが来る
古い友達古い切手を貼って来る
負けておくことだ言わせておくことだ
墓掃除してたら弟が来たよ
速達が届いて珈琲がうまい
 

10月25日(土)例会より
宿題「破る・破れる」 橋倉久美子 選と評
  おむすびに破る順序を指示される 圦山 繁
  封筒の中の小為替まで破る 吉崎柳歩
 止 日本記録は日本人しか破れない 吉崎柳歩
 軸 気づかずに破れば破りよい掟 橋倉久美子
宿題「面倒」(共選) 西垣こゆき 選
  面倒な隙間で生きている会社 加藤吉一
  面倒と言ってもおれず脱皮する 橋倉久美子
 止 質問が多い賢すぎる生徒 吉崎柳歩
 軸 ゴミ屋敷面倒の山積んである 西垣こゆき
宿題「面倒」(共選) 水谷一舟 選
  面倒で其の他多数と書いておく 芦田敬子
  面倒がいっぱい妻に逝かれると 吉崎柳歩
 止 女ってめんどう女から見ても 橋倉久美子
 軸 尻ぬぐい母に話をもって来る 水谷一舟
宿題「自由吟」 青砥たかこ 選と評
  カラオケは苦手鴉もわたくしも 吉崎柳歩
  エビフライ一番好きなのは尻尾 北田のりこ
 止 植木屋の好みに松は逆らえず 圦山 繁
 軸 ありのままがたぶん一番難しい 青砥たかこ
席題「釦・ボタン」(互選)
11点 針箱の隅で拗ねてる替え釦 圦山 繁
10点 ファスナーを別に恨んでないボタン 吉崎柳歩
 6点 掛け違い朝のボタンは焦ってる 竹口みか子
 5点 とれかけのボタンが服にしがみつく 橋倉久美子
  金平糖ボタンの代わりにはならぬ 橋倉久美子
  リハビリへ釦かけたり外したり 青砥たかこ
 
特別室

 ノエマ・ノエシス                                     清水 信

 これも青砥さんの紹介によるものだろうが『ノエマ・ノエシス』という前衛的柳誌を送って戴いて驚いている。
 その二十五号は百二十ページを超す美麗誌で、どのページにも、端々まで神経が行き届き、知的な遊び心が横溢していて、感心した。

 埼玉県和光市本町31・2・207から発行、代表は高鶴礼子(販価千円)。

 巻頭には高鶴代表の詩「誓約」を置くように、川柳オンリーではなく、「詩的なるもの」への誠実が先行しているようで、漢詩、短歌、紀行、エッセイ、詩編と多方面への関心を示しているのも良い。
 とりわけ、エッセイ陣の多彩充実ぶりは、多分群誌を抜いているだろうと思う。物見遊山的紀行文を超えた次のような連載は、ユニークである。

高鶴礼子「アジア・インド洋クルーズ覚書」
北川英子「エイコ先生が行く、イタリヤ」
瀬川正二「ラーマ・ヤナの世界を旅する」
佐久間初男「アルジェリア・レポート」
内田知行「バンドンを散策して」

 これらエッセイ群の頂点にあるものが、高鶴代表の「鶴彬を二度殺さないために」という一文である。国会でゴリ押しで可決された「特定秘密保護法」に対する激しい抗議である。
 時代や政局に対して、文学の側からモノを言わなければならぬ時代が来ていることを大胆に実践している趣きである。

『特高外事月報』や『川柳人』の文献を引用しながら、「人権がないがしろにされる状況を是とする」文芸人は誰もいない筈だと、闘いを訴えている。瀬川の一文も、とかく問題の多い、劣化の激しいオリンピックの現状を衝き、呑風郎の「エヴァンゲリオン論」と豊崎光一の思想に触れて、深く重い訴えを示している。岸本一郎の「二十六本指の宇宙人」という連載も、右傾化する大阪市政に対するプロテストが目立つ内容で、ストリートパフォーマンスに期待できる。内田知行のインドネシア体験に見る「日本の洞穴」にも、驚いた。
「平成落首」と題した「川柳なんだかんだ」という投書欄も、会員や読者の自由な発言を集めて、イキイキしている。

「雫座選評」に取上げられた作家たちの佳句を、いくつか拾ってみる。

・従順な犬で時々家出する      山口糸子
・そそけたり芒はだれと別れたか  飯田啓子
・朝顔の萎えて一途な彼方の日   坂本幸子
・始めます再起動するその準備   岡田深幸

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『遅い』  応募88句
 2 1  一人だけ違うメニューがまだ来ない 水野リン子
 1 7  遅くなると言って出たので帰れない 西垣こゆき
 1 1  三十回噛んでいるから遅くなる 瀬田明子
     君とならゆっくりでよい観覧車 柴田比呂志
 1 0点  国産の横綱を待つ国技館 加藤吉一
    7点  ねずみ取り急に流れが遅くなる 福井悦子
    6点  日が落ちてやっと郵便やってくる 青砥たかこ